Minimum Bout Act.02
戦地をうろちょろする方が悪いと考え始めている自分に気付いた時、味わった事の無い目眩と吐き気に襲われた。
目をつぶれば少女の顔が浮かび、何故私を撃ったの? と恨めしそうに尋ねるその声に眠れぬ日が続いた。
自己崩壊を仕掛けていたシンを、暗闇から引きずり出してくれたのはカッツだった。たった一言、『やめちまおうぜ』と軽く言って笑ってくれたその言葉はまさに救いだった。
仲間を置いて逃げるのは卑怯だと思ったが、シンは銃を握る事が出来なくなっていたため、誰も咎めなかった。おまけに、『やりたくない事を無理矢理やる必要はねえ。これからは誰かを殺すんじゃなくて、違う方法で人の為になる事をやればいい』そう更に言ったカッツの言葉がシンを揺り動かした。
誰が戦争を望んでいるのか。それを考えた時、少なくとも自分や自分の家族、そして周りにいる仲間ではないとすぐに判断した。
チェイスにも同じように銃を置いて欲しかったが、彼はシンとは別の結論を導き出した。家族を守る為、一日でも早く平和が訪れる為に武器を取るのだと……
「そこにいるのは誰だっ!? 出て来い!」
昔を思い出していると突然怒鳴り声が響き、シンは身を隠していた建物の壁から、両手を挙げてゆっくりと出て行った。
「撃たないでくれ。オレはシン。チェイスJr.に呼ばれて来た」
「……Jr.ってーーーお、お前、もしかしてヘイズのシンか?」
構えていた銃を少しシンから反らし、若い男が驚いたように尋ねた。シンは頷いてもう一度手を挙げる。
「武器は持っていない。もし知っているのなら、チェイスJr.の所へ連れて行ってくれないか?」
男は軍服などではなく、汚れてはいるが普通のシャツにGパンを履いている。シンは分かっていた。武器を持っていても、彼ら反政府軍も民間人なのだ。それなのに自分は政府にたてつく反逆者としてまるで虫けらのように殺していた。
そんな事が許されるはずがない。
民間人の少女を撃ち殺すより、もっと早くに気付くべきだったのだ。
「あいつに会いに、わざわざ来たってのか? あの映像一つで? 本当かよ……まあいい。来い、連れてってやる」
銃を縦に振り、男はシンを促した。それに黙って従い、シンは背中に銃を突きつけられたまま歩き出した。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ