Minimum Bout Act.02
リドヒム軍の軍服を着ているが、少年が持っている改造されたその銃は、反政府軍が好んで使うものだ。
「ーーーおい、こいつはもしかしたらシンのヤツやばいかもしれねえぞ」
カッツが言うより速く、ルーズはこの数時間以内にリドヒムに入国した人物の特定に取りかかっていた。
幸いここはステーション内のラウンジだ。ルーズの手に掛かれば入国管理局のデータを見る事など瞬きをする位簡単に出来る。
「あった。シンは私たちより1時間前に入国してる」
「IDからどこへ行ったか辿れるか?」
「ステーションでレンタカーを借りてるわね。盗難防止装置が付いてるから、そこから辿るわ……いた! リドヒム軍本部敷地内で止まってる」
画面で点滅する地図を確認し、ルーズはすぐにレンタカーの手配をして立ち上がった。
「よし、急ぐぞ」
「まだ本部にいてくれたらいいんだけど……」
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レンタカーを運転するカッツは昔を思い出しているのか、いつもより少しだけ真面目な顔で前を見据えている。
何故カッツが人探し屋などという職業をやっているのか、ルーズは知らない。別に知らなくとも今の生活に不満は無いし、人探し屋という仕事も案外気にいっている。探す相手は様々だが、人に感謝されるというのは嬉しいものだ。
特に、行方が分からなくなった家族が再会した時のあの空気は、家族を知らないルーズにはこそばゆいような、不思議な感覚を与えた。
自分にも、記憶があった頃には家族がいたのだろうか? いや、捜索願が出されていないという事は、きっと一人きりだったのだろう。これ以上覚えの無い過去に懐柔を求めても虚しいだけだ。
と、感傷に浸っていると、ズウンと遠くで地鳴りがし、ルーズ達が乗る車にまで振動が伝わって来た。
「煙が上がったな」
視線の先には市街地の影が見えていて、その奥から白煙が立ち上っている。
「リドヒム政府の資金はエンド政府や観光客だが、反政府軍の資金源が何か知ってるか?」
「plain……でしょ」
少しずつ近づくにつれ、市街地の様子も鮮明になって来た。ルーズは知らず体に力が入っていた。
カッツの問いに答えながら、あの映像の少年の顔を思い出す。
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ