Minimum Bout Act.02
No.5「名誉のため」
初めて訪れたリドヒムの地は、思ったよりも美しく整備された惑星だった。
内乱が何十年も続いていると聞いていたが、ニュースで見る映像は戦闘の激しい地域のものらしく、宇宙ステーションや空港は戦地から離れているためか、のどかですらあった。
ルーズはカッツのラグビーボールのような小型宇宙船をステーションに停めると、すぐにインカムでシンに連絡を試みたが、繋がらない。
「……やっぱり駄目だわ、接続を切ってる」
「そりゃそうだろうな、1人で出てったんだから。それよりさっきの映像で見た限り、チェイスJr.が映っていたのは市街地だ。丸腰でさらにただの一般人の俺らじゃ観光地までしか入れないぜ」
すぐ側では政府と反政府組織が戦っているというのに、リドヒムはその戦争を観光の目玉として売り込んでいる。まるで罪人と猛獣の殺し合いを見せ物にしていた古代のローマ帝国のようで恐ろしい。
極めつけはリドヒムに入国してまず最初にやらなければいけないのが、戦渦に巻き込まれて死んでも文句はいいません。という政府が発行する同意書にサインをしなければいけない事だ。戦争を売り物にして観光客から巻き上げた金を戦争の資金に当てているくせに、その資金源が死んでも知らんフリをするというのだ。
資金を集めつつ内乱のどさくさに紛れて近くの小惑星にまで手を伸ばしているらしいが、実際リドヒムが何を企んでいるのかその真意は分からない。
長いコートを翻し、カッツは颯爽と歩き出した。
「まあなんとかなるか! よっしゃ、シンのアホを捕まえに行くぜ」
「ちょっと待って」
「ああっ?」
せっかく格好良く決めた所に水をさされ、カッツは恨めしそうにルーズを振り返った。
ルーズはノート型端末を持ってラウンジを指差す。
「まず最初にCDの解析をしたいの」
「あー、なるほどな」
ラウンジでは誰でもネットに接続出来るようになっていて、コーヒーを頼むとルーズは素早く解析を開始した。
CDが撮影された時期、場所の特定をするのだ。
「やっぱりリドヒム市街地で間違いなさそうね。撮影されたのは2週間程前……ん? カッツ、この子が持ってる銃だけど、見て」
と、画面を示すルーズ。カッツは自動小銃をしばらく見つめてルーズの顔を見た。
「こいつはリドヒム政府が使ってる銃じゃねえな」
作品名:Minimum Bout Act.02 作家名:迫タイラ