黒い満月
ミッキッコとの久し振りの会話。
私は、ここは神聖な職場であるにも関わらず、ぞくっぞくっと来ました。
それでこのチャンスは逃すまいと、出来るだけ軽やかに、
「聞いて欲しいことって? ああ、いいよ …
じゃあ、ちょっと今から食事にでも行こうか?」と誘ってみました。
この申し込みに、
ミッキッコはその湿りのある黒髪に、そっと白い手で触れる仕草をしながら、
「うん、いいわ」と素直に頷きました。
こうして私はミッキッコを連れて、オフィスを出ました。
そして、近くにある多国籍レストランの個室へと入りました。
久々に向かい合った我々、
まずは生ビールで、「グッド・シー・ユー・アゲイン!」と、このデートの慶びに感謝。
そして、ほんの口慣(な)らしに … と言えば、部長から叱られそうですが、
しばらく仕事の話しをしました。
その後、私はおもむろに、
「ところで、僕に聞いて欲しい話しって … 何なの?」と尋ねてみました。
ミッキッコはナスのチーズ揚げのような、ちょっと正体不明のものを摘んでいたのですが、
その箸をゆっくりと下ろし、
そしてビールを一口だけそっと飲みました。
それから一息の間を取って、ゆっくりと話しを始めて来るのです。