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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「神のいたずら」 第七章 事件

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次の23日に肇の家に碧は夕方から出かけて行った。詩緒里と一緒に出かけた原宿で買ったブーツをミニに合わせて、大きな紙袋をぶら下げて歩いていた。肇は途中まで迎えに来てくれていた。
「碧!」
「肇くん!」
並んで歩いて間もなく肇の家に着いた。
「いらっしゃい!待ってわよ」母親の寿子が迎えてくれた。奥から父親の雄一が顔を出して、
「よく来てくれましたね。上がって下さい」肇に案内されて、居間でソファーに腰掛けた。ワンピースが上にめくれてしまい、下着が見えそうになったので立ち上がって座り直した。

「父の雄一です。妻は寿子と言います」
「小野碧です。今日はお世話になります」
「寛いで行って下さい。改めて礼を言います。肇が世話になりました。本当に感謝しています。あなたのような可愛いお嬢さんとお友達になれて息子は幸せです。ずっと仲良くして下さい」
「そんな事仰って頂いて・・・こちらこそよろしくお願いします」
「あなた、固い挨拶は抜きにして、始めましょうよ」
「そうだな・・・じゃあ、乾杯からだ」

大きなチキンが美味しそうにテーブルに乗せられていた。グラスを「乾杯!」と言ってカチンと合わせて、それぞれに取り分けながら食事が進んだ。

「碧ちゃんは、お姉さんがいるんだったよね?」雄一が尋ねた。
「はい、高校三年です。弥生って言います」
「そうか、来年受験だね。どこ受けるの?」
「早稲田って言ってました」
「へえ〜優秀だね。碧ちゃんといい、頭のいい家系なんだね」
「そんな事無いですよ。姉は外に出るより勉強が好きなだけです」
「そんなことを言っちゃ可哀想だよ・・・それに姉妹なんだからきっと可愛い人だろうし」
「お姉ちゃんは私が言うのもなんですが、可愛い方だと思います」
「そうだろうね。羨ましいなあ。家は女の子が出来なかったから特にそう感じるよ」
「肇くんが居るじゃないですか・・・家は男の子が居ないから、父もきっと淋しく感じていますよ」
「そんなものかな・・・碧ちゃんが将来お嫁に来てくれたらどんなに嬉しいか・・・って思うよ」

妻の寿子は夫がそこまで言ったのでビックリした。

「あなた!何を言ってらっしゃるの。まだ中学生なのに」
「そう思っただけだよ。大げさに言うなよ、なあ肇?」
「碧が困った顔しているじゃない・・・」
「男は今ぐらいからそう考えても構わないんだぞ。好きになった人は幸せにするんだって・・・早すぎることなんか無いって父さんは思うけどな」
「お父様、そんなに言って下さって、碧は嬉しいです。何事もなく大きくなったらお嫁さんにしてもらうように肇くんにお願いしますから・・・」
「ほら見ろ、寿子。碧さんだって、そう考えてみえるぞ。期待しようじゃないか・・・」

いつに無く機嫌のよい父であった。おかげで肇はもうワンランク上のギターを買ってもらうことが出来た。碧に感謝したことは言うまでもない。

26日の土曜日にギターを触らせてもらいに再び肇の家を訪ねた。

「今日は父も母も出掛けてしまったんだ。気兼ねなく遊んで行けよ」肇は玄関を開けるなりそう碧に言った。
「ほんと・・・大丈夫?二人きりで・・・」
「どういう意味?」
「ご両親が心配しないかって言うことよ」
「言ってあるから大丈夫だよ」
「何か言われた?」
「別に・・・」
「そう。家じゃ絶対になんか言われるよ」
「女の子だからね」
「男子の親だと気にされないって言うこと?」
「多分ね」

碧はなんか嬉しくなった。肇と二人だけの空間になっていたからだ。玄関が閉められて居間に入った碧は直ぐに抱きついた。

「碧・・・なんだい急に・・・驚かすなよ」
「こうしたかった・・・」
「俺もだよ・・・ギター見るかい?5万円って言ってたけど父が機嫌良かったから、もう少し良いやつを買ってもらったんだ」
「そうなの、良かったわね。見せて!」

自分の部屋に案内されて、置かれてあったギターを見た。偶然にも名古屋の家に置いてある隼人のギターと同じメーカーの良く似た楽器だった。
「ヤイリじゃない!高級品ね・・・」(*ヤイリ=岐阜県にあるギターメーカーの商標)
「よく知ってるな!何でだよ」
「本当の事を言うとね・・・知っているお宅にあったギターと同じだから覚えていたの。今は持ち主が亡くなって誰も弾かなくなったみたいだけど・・・妙に覚えているの」
「そう・・・まあ良いけど、弾いてみるかい?」
「弾けちゃったらどうする?」
「ウソだろ?弾けないって言ってただろう」
「少し触らせてもらっていたの・・・簡単なコードぐらいなら押さえられると思うわ」

碧はギターを抱えて、チューニングを確かめて、直ぐに弾きだした。隼人としての感触は無かったが、小さな指でもしっかりと弦は押さえることが出来た。
「碧・・・ウソだろう・・・信じられない・・・」

肇は勉強でコンプレックスを感じるだけでなくギターでも同じように感じさせられた。
部屋に響く物悲しい短調の響きは、何かを思い出させたのか、碧の涙を誘ってしまった。

肇は碧がギターを弾けるだけで驚いていたが、泣いている姿を見てさらに驚かされた。
「何か気に触ることを言ったのかな・・・」
「ううん、違うの・・・ごめんね。思い出したことがあったから・・・肇くんが気にしてくれなくてもいいのよ。昔のことだから」
「そうか・・・安心した。勉強だけじゃなく碧にギターも教えてもらわないといけなくなったな・・・忙しいぞ、いいのか?」
「えっ?ギター教えるって言ってないよ」
「教えろよ。弾けるんだから」
「時間無いよ。無理・・・」
「冷たいなあ・・・仕方ないから習いに行こうかな」
「それが良いよ。ちゃんと教えてもらった方が早道だよ」
「パパに頼んでみるか・・・そうだ、忘れてた。何か飲むか?」
「ありがとう・・・じゃあ温かいココア」
「いいよ。ストーブも点けておこう」

ベッドに座って並んでココアを飲みながら身体を寄せ合っていた。今日は女の子だからそのことを悟られないように今以上は近づかないでおこうとした。
「碧・・・この前、父さんに言ったお嫁さんにしてもらうって言う話、あれ本当にそう思っているのか?」
「ウソじゃないよ・・・肇くんの気持が変わらないなら、碧はずっと好きだからそうするよ」
「でも、違う高校に行って、違う大学に行って、それでも俺達って今と変わらなく付き合えるのかなあ・・・」
「自信が無いの?」
「お前とは成績も違うし、それに・・・」
「それになによ?」
「可愛いからたくさんの子に誘われるだろうし・・・俺みたいな奴よりカッコいい奴たくさんいるだろうしな」
「今からそれじゃあ・・・気持が持たなくなるよ。そんなふうに考えないで自信持ったら?男の人は頑張っている姿がカッコいいの。東大出たからとか、一流企業に勤めているから、とかで素敵って思わないのよ、女子は・・・」
「本当か?碧のこと世界一好きって、それだけは自信がある。誰にも負けないし、渡さない」
「肇くん・・・それだけでいいよ」

今すぐに抱かれたい気分だったが・・・身体がノーを出していた。