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てっしゅう
てっしゅう
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「神のいたずら」 第七章 事件

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「こっちおいで・・・見せてご覧・・・やったね、おめでとう・・・大人になった。心配要らないから・・・」
「どうすればいいの?」
「まずは脱いで・・・お姉ちゃんのあげるから。これをつけて・・・自分で出来る?」
「どうするの?」
「やってあげる・・・」

弥生は慣れたものだ。自分のタンスから下着も出して穿かせた。碧はまだ動揺していた。替えの物をもらって碧は終業式に登校した。

学校ではいつもの碧とは違っておとなしくなっていた。詩緒里は気になって話しかけてきた。
「碧、どうしたの。風邪でも引いたの?」
「ううん、なんでもないよ」
「だって元気ないじゃない。今日は終業式だよ。明日から冬休み、クリスマスもあるのに」
「身体がスッキリしないの・・・」
「そう、まあ女の子だからそういう時もあるよね・・・って、まさか来たの?」
「・・・うん、朝あった」
「そうだったの・・・一人前になったって訳か、碧も」
「今までは半人前だったの?」
「そうは言ってないけど、子供って言うことだったからね。ふ〜ん、どんな気持?肇くんに話すの?」
「なんだか恥ずかしい・・・男子に話すことじゃないでしょ?」
「それはそうだね。それはいいとして、ねえクリスマスはどうするの?」
「明日肇くんの家でパーティーするの。プレゼントも買ったし。詩緒里ちゃんは?」
「もちろんデートよ。どこに行くか決めてないけど・・・先輩に任せる」
「楽しそうね・・・近藤さんはカッコいいから詩緒里ちゃん夢中じゃないの?」
「解る?そうみたい・・・」
「ねえ?キスした?」
「それがね、そういうこと嫌がるのよ。手も恥ずかしいからって繋いでくれないし・・・好きって言ってはくれるけど・・・態度で示してくれないとね」
「初めはそうなんだよきっと男子って。直ぐに仲良くなるよ」
「碧は?どうなの」
「あんなことがあったでしょ・・・今はとても好きって感じるの。ちょっと子供っぽいけど、話をしていても楽しいから幸せよ」
「ふ〜ん、お互いにラブラブって言う訳ね・・・内緒だけどね、聞いた話・・・達也君彼女出来たらしいよ」
「えっ?ほんと・・・だれなの?」
「このクラスじゃないらしい・・・詳しくは知らないけど、二年生みたい」
「年上の彼女?・・・へえ・・・そうだったの」

この年齢で女性が年上ということは考えにくかったが、達也は晩熟だったので、その方が勉強にも影響が少ないだろうと思えた。

部活がなくなっていたので肇は終業式が済んだら帰ろうとしていた。碧は部活の先輩に事情を話して今日は休ませてもらった。追いかけるように肇を見つけて近寄った。

「肇くん・・・待って」
「碧、部活は?」
「休んだ。一緒に帰ろう」
「どうしたんだ?具合悪くなったのか」
「まあね、でも気にしないで・・・明日は行けるから」
「そう、じゃあいいけど。ご飯食べたらちょっと出かけないか?」
「どこへ?」
「御茶ノ水に行きたいんだ」
「御茶ノ水?どうしたの」
「うん、父さんがねクリスマスプレゼントにギター買ってくれるって言うから下見に行きたいんだよ」
「ギター買ってもらうの?へえ〜弾けるの肇くん」
「弾けないよ。弾きたいなあってずっと思っていたから」
「いいね、行こう・・・じゃあ目白で1時に待ってる」
「1時だな・・・じゃあ、後で」

肇はギターを買ってもらうのか・・・
隼人はギターを弾いていた。自分で曲を作って歌ってもいた。優と逢っていた時も、時々弾いていた。碧は久しぶりにそのことを思い出していた。少し隼人の感情が顔を出していた。自分も弾きたいと思えたが、この小さい指で前のように弾けるのだろうか、それは解らなかった。

「ママ・・・肇くんと御茶ノ水に行って来る。ギター買ってもらうから下見に行きたいって」
「付いて行ってあげるの?」
「そう、ねえパパかママってギター弾ける?」
「弾けないわよ、何で?」
「いいの・・・碧も弾けるかなあって思っただけ」
「弾きたいの?」
「肇くんが買ったら触らせてもらおうかな・・・」

二人は新宿から中央線に乗り換えて御茶ノ水の駅を降りた。

クリスマス前とはいえ平日の午後、お茶の水はそんなに人が多くなかった。駅を出て坂を下ってゆく左側にたくさんのお店が並んでいた。アコースティックギターの専門店に入って楽器を見ていた。店員が近づいてきて、「宜しかったらご相談伺わせて頂きますのでお申し付け下さい」と言ってくれた。

肇は碧の顔を見て、「どれがいいのかわからないね・・・碧はどう思う?」そう聞かれて、どう答えようか迷ったが、
「良く知らないのなら、予算話してお店の人に選んでもらったらどう?」そう答えた。
「そうだな・・・あのうすみません、プレゼントに買ってもらう予定なのですが、良く解からないので5万円ぐらいまでで、お勧めのものどれですか?」

店の店員は親切に説明をしながら二本を選んで目の前に持って来てくれた。
「俺は右の方が好きだけど、碧はどう思う?」
「肇くんが好きな方でいいんじゃない?」
「無責任だなあ・・・好みぐらい言ってよ」
「そうね・・・ヤマハはきっとアフターがしっかりしているから、私的にはお勧めよ」
「おまえ・・・ギター弾けるのか?」
「そう感じただけ・・・」

店員は、「お嬢様の言われる事も一理ありますよ」そうアドバイスした。
「じゃあ、これを取り置きしておいて下さい。24日か25日に買いに来ますから」そう言って店を出た。

「ねえ?ギター買ったら私にも弾かせて・・・」
「いいよ。家に来いよ。父も碧ならきっと歓迎するよ」
「そう・・・じゃあお邪魔しようかな。また電話するね、行ける日を」
二人は手を繋いで少し散歩した。人通りが少なくなった裏通りにある小さな公園でベンチに腰かけ、寒さを凌ぐために寄り添っていた。
「こうしているのが好き・・・肇くんとこうしているのが」
「碧・・・俺は思い切って手紙を書いて渡して本当に良かったよ。こんな事していられるなんて・・・夢見たいだから」
「肇くんが好き・・・碧のこと離さないで」
「当たり前だよ。絶対に離すものか」
「こっち見て・・・誰も見てないから・・・」
「碧・・・いいのか・・・」

肇がそう言った瞬間に、碧から唇を寄せた。温かく柔らかい感触が肇に伝わった。


夕方家に戻ってきた碧は食事のときに珍しく赤飯が用意されていたことに気付いた。
「ママ?どうしたの・・・珍しいね赤飯なんて」
「碧、弥生に聞いたわよ。今朝生理が来たって」
「うん、後で言おうと思っていたの。それでなの?」
「そうよ、弥生の時もお祝いしたから」
「何でお祝いするの?」
「昔からそういう慣わしなのよ。多分子供が生めるって言う期待を込めてなんでしょうね」
「子供・・・か。碧もう生めるんだね」
「そうよ、そういう身体になったって言うことよ。大切に考えてね」
「ありがとう・・・神に感謝しなきゃ・・・」

父親の秀之も赤飯を見て気付いた。やっとそうなったか・・・碧の今までのことを振り返りながら喜びを感じていた。