小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「神のいたずら」 第七章 事件

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「そう・・・ご両親の気持ちも解かるけど、ここはまず学校からの言い分を聞いてからにされたほうがいいわよね。ねえ?お父様に電話代わって?」
「大丈夫か?かなり興奮していたぞ・・・」
「大丈夫だから」

電話口に肇の父親が出た。
「もしもし・・・小野さんが助けてくれたんですって、肇から聞きました。ありがとうございます。こちらから電話をしなければ、と思っていましたがちょっと興奮してしまいまして忘れておりました」
「いいんですよ・・・当たり前のことしかしていませんから。それよりお父さま、肇くんから聞きましたけど警察には、まだ届けないで下さいませんか?学校側の態度を聞いてからでも遅くはないと思いますので・・・お願いします」
「小野さん・・・あなたはしっかりとされていますね。大したものだ。そうしましょう・・・明日の午後学校に私たちも伺います。校長からどうするのか聞いて判断しましょう」
「ありがとうございます。今回の事は肇くんもショックだったでしょうから、十分に休ませてあげてください。明日は一日休まれてはいかがですか?」
「気を遣ってくれるんだね・・・お付き合いしていると肇から聞いています。幸せな奴だ、あいつは・・・様子を見て学校を休ませてもらいましょう。本当に今日はありがとう。ご両親にもよろしくお礼を言っておいて下さい。では・・・」

まずは警察沙汰にならなくて良かったと碧は思った。今夜は肇が寝れないだろうなあと気の毒に感じた。そう言えば優の母親に「危ないことには近づかないように」と注意されていたことを思い出した。小さい身体で男子に向かってゆくなど、自殺行為だ。これも肇のことが好きになっていたから出来たのだろう。恋愛とは愛と勇気を与えてくれる魔法なのだ。


学校であった事を弥生に話した。
「お姉ちゃん、今日ね大変なことがあったの・・・」一部始終話した。

「そんな事に巻き込まれたのね。しかし勇気あるね碧は・・・男の子ばっかりだったんでしょ?」
「うん、そうだよ」
「怖くなかったの?それが理解できない」
「怖くは無かったけど、勝てる気はしなかった」
「そうでしょ。でも碧に叩かれるなんて・・・驚いたでしょうねその先輩は」
「目を丸くしていた」
「あなた余裕ね・・・何処から来るのその態度は?」
「・・・肇くんが、かわいそうだったから」
「肇くん?・・・手紙をもらった子ね。そう仲良くなっているんだ」
「まあね、今日で良くそのことが解かった」
「勇気をもらったのね・・・好きな人を助けたいって言う勇気を」
「そうかも知れない・・・さすがお姉ちゃんだね。碧のことよく解かってくれている」
「そうよ、この頃ねなんだかあんたのことが良く見えるの。不思議だわ・・・霊感が出来たのかしら?」
「霊感?じゃあ、占ってよ。私と肇くんどうなるか?」
「それは・・・」

霊感じゃなかったけど、このとき弥生はあまりいい予感がしなかった。何故だか解からないけど、そう心には映っていた。
「肇くんは、いい子みたいだけど・・・お姉ちゃんには長続きしないように感じられるの。どちらが悪いと言うわけじゃないけど」
「そんなあ・・・ひどい・・・肇くんの事がタイプじゃないんだお姉ちゃんは?」
「そういう意味じゃないよ。だから言ってるでしょ、いい悪いじゃなくそう感じるだけだって」

姉の予感が的中するのはもう少し後になってからだった。碧の人生を決める出逢いとそこに待ち構えていた運命。『神』が存在する場所で異変が生じ始めていた。


翌朝学校の職員室は混乱していた。責めを受けた一年生の親から苦情の電話がかかってきたからだ。校長は登校してきた問題の三年生を一旦下校させ自宅謹慎にした。他の三年生も同様に帰宅させた。二年生については謝罪文を書かせてそのまま授業を受けさせた。卓球部の一年男子は一人で登校したり、親と同伴で登校したりとばらばらであったが、同伴の親たちは校長室で待機した。

一番症状の重かった上田肇は親から自宅休養させると連絡が入って休みになっていた。午前中清水先生の受け持ちは自習となり、碧は職員室で当事者の一年生と一緒に校長や教頭から事情徴収を受けていた。

肇を除く一年生の親は三年生と二年生から謝罪を受ければ今回は我慢すると言う事になったが、上田の父親はそれには同意しなかった。校長は自宅へ出向いて説得を始めたが、他の生徒と一緒では受け入れられないと門前払いをした。困った校長は条件を聞いた。

「納得していただける条件とはどうのようなものでしょうか?」
「校長、まずは謝罪ですが、息子の受けた傷は大きい。御免なさいでは済まされません。直接手を出した生徒へは先様の両親とともに謝罪を、加わっていた三年生と二年生には引き止めなかった責任で謝罪と一年生を除く二三年全員の丸刈りを要求します」
「解かりました・・・持ち帰って二三年の部員と両親へはその旨伝えますのでお時間を下さい」
「解かりました。返事が来るまで息子は自宅休養させますのでご了承を」

肇の父親の意志は固かった。結局全ての条件をのんで問題は解決した。卓球部は無期限閉部となった。問題の三年生は両親の意向もあり転校した。

ようやく学校に出てきた肇を碧は優しく迎えた。帰り道にはもう手を繋いで歩くようになっていた。校則違反ではあったが、そんな事誰も止めはしなかった。12月に入って期末試験で肇は大きく成績を伸ばした。両親も碧のおかげと喜んでクリスマスに一緒にパーティーをやろうと誘ってくれた。

「ママ、23日の祝日に肇くんの家でクリスマスパーティーやるから来てって言われているの。行ってもいいでしょ?」
「お家でするのね・・・だったら構わないわ。何かプレゼント持って行くの?」
「考えてなかったけど、渡した方がいいよね?」
「そうね、向こう様も碧にきっとくれるから用意して行った方が無難ね」
「何がいいかな・・・食べるものは用意してあるだろうし」
「肇くん用にマフラーとかがいいんじゃない?」
「マフラー?そうねそうしよう・・・ママ一緒に買いに行こうよ」
「そうしましょう。碧にもママからプレゼントで買ってあげるから」
「嬉しい、ねえねえお姉ちゃんも一緒に行こうよ」
「弥生にも聞いてみるわ」

前の日曜日に三人は買い物に出かけた。久しぶりに女同士で買い物をした。碧は肇に買ったものと同じマフラーの色違いを、弥生はダウンを買ってもらった。ジングルベルが鳴り響く東京の街は賑やかで人通りも多かった。
「年が明けたら弥生は受験ね。早稲田に受かって欲しいわ、ママもパパと一緒に応援しているから、頑張ってね」
「うん、頑張るよ。大丈夫だから今は自信出てきたし」
「お姉ちゃん、きっと受かるよ。そんな気がする」
「ありがとう、碧」

弥生には寂しく、碧には楽しみなクリスマスがやってくる。幸福のサンタは何を二人にプレゼントしてくれるのだろうか。弥生には間違いなく合格の通知。碧にはなんだろう・・・プレゼントではなく、別の意味で素晴らしい贈り物であった。

前日の火曜日碧は朝目覚めて直ぐに弥生の部屋に入った。
「どうしたの?碧こんな早くから・・・」眠い目をこすってそう聞いた。
「お姉ちゃん・・・血が・・・出てる」