キミと一緒!
俺達は今、兄弟揃って出かけている。
仲がいいなー。違う。
運試しだ。
・・・・・・何もない事を願いつつも、俺は飯の買い物があるから、丁度いい荷物持ちがいるのでデパートへ行くことにした。
「うえっ・・・・人多いなぁ・・・・」
「有利兄は人込み苦手なの?」
「まぁね・・・・・人が多いとさ、会いたくない人と会っちゃいそうで怖いじゃん?だから苦手だよ」
「そうなんだ・・・」
言われればそうかもしれない。俺もこういうときに限って会いたくない人と会ってしまう。
そう、運命のように―・・・
「――あれっ?木庭蘇(こばそ)じゃないか!」
木庭蘇?・・・・俺の隣にいる女の人かな?・・・・・けど、全く反応していない。
「気づいてないのか・・・・・そこの、木庭蘇有利と利句!!」
「・・・・・っ」
有利?利句?俺の兄さんは日野有利と利句。だよな・・・?
「・・・・っ。・・・・久しぶりだね、眞也(しんや)。あいかわらず五月蝿いほど元気だね」
「ひ、久し・・・・ぶり、だね・・・」
「・・・・・」
今、話しているのは日野有利、利句じゃない。木庭蘇有利、利句だ。
何で木庭蘇なの?
何で日野じゃないの?
分からない・・・・
「っと・・・・・俺、そろそろ行くな。また、機会があったら話そうな」
「そうだね。それじゃぁね」
「さ、さよなら・・・」
「!!・・・・・立ち話もなんですから、喫茶店でも行きましょうか」
そう言うと、俺たちは喫茶店に行った。
『・・・・・・・』
ずっと無言状態。最初に口を開いたのは、
「実はと言うと・・・・・・僕達は兄弟じゃないんだ」
有利兄の、信じられない言葉だった。
「っ、兄さ・・・」
「後ろめた言い方は、返って傷つく。こうなったら・・・・・・真実を言うしかないんだよ」
有利兄さんと、隆樹兄さんは何の話を言っているんだろう。
「本当の、兄弟じゃないって・・・・?どう言うこと?俺・・・・・・馬鹿だから分からない」
「・・・・・僕達は兄弟じゃない。つまり、血なんか繋がっていないんだ。
有利兄の言葉を聞いた瞬間―体が凍ったようだった。心臓が痛い。
「嘘・・・・・だ。兄弟じゃないって・・・・・じゃ、あ、亜佐美さんはどうして俺の兄じゃない人の家に連れて行ったわけ?しかも、亜佐美さんは俺の兄って・・・・・」
「・・・・・・ついでに言っておくね。亜佐美さんは・・・・・朱莉君のお母さんだよ」
「!!!!」
知らなかった事実が明らかになってくる。
お願い、もう話さないで。聞きたくない。こんな事実・・・・・!!
神様は俺の願いなんか聞いていない。
「そして、亜佐美さんは・・・・・・病気にかかっているんだ」
「そ、んな・・・・・」
神様が俺に、弓を放っている。痛くても、ずっと、ずっと・・・・
「な、なんで・・・・・兄弟でも、血の繋がっていない俺を、亜佐美さんが、家に・・・連れて行って・・・・兄が違うのに・・・一緒・・・・・」
自分でも何を言っているのか分からない程、頭の中が混乱している。
「亜佐美さんがどうして君に血の繋がっていない兄弟の家に弟として、家に住ませたのはね。僕達兄弟は、亜佐美さんの夫のお姉さんの子供が僕等なんだ。そこまでは、いい?」
俺は喋ることなんか出来ないから頷いた。喋ったら泣きそうだから・・・・・
「けど、どうして夫のお姉さんの兄弟の家に住めって言うのはね・・・・お姉さんは亜佐美さんに何かあったら言いなさい。って言われていたからだよ。・・・・・だから、君がここに来たってことは、何かあったからってことになるんだ」
よく分からないけど、分かったような気がする。俺がココへ来た理由は、亜佐美さんが病気だから。けど、俺を1人にさせるのはいけないから、俺の父親の姉の子供の家に来たってことか・・・・・そっか・・・・わかった。
「・・・・・っ!!」
分かった時には、喫茶店を出ていた
「朱莉君!!??」
俺は、何処かへと走った。走ったらその事実を忘れられると思ったから。
「っ、は・・は・・・・!」
あれから何分は走っているのだろう。
「・・・・・?ここ・・・は?」
いつも間にか知らない公園にいた。――苦しい。走り過ぎたのか・・・・それとも
「・・・っ・・・・!!!!」
頭の中から流れてくる“事実”
―気持ち悪い。
―君は本当の兄弟じゃないんだ。―あなたのお兄さんの家に
やめてくれっ・・・!!聞きたくない!消えろ、消えてしまえ!!
「ぅあ、あぁ・・・・アアアアああああああああああああああああ!!!!!!!!」
奇妙な声と共に涙が出てくる。裏切られたからこそ、悲しすぎる。
「うっ・・・・うぅっ・・・・あ、あぁ・・・・あああ・・・・!!!」
俺の感情と一緒に頭上からは雨が降っている。・・・冷たい・・・
「何で・・・・何で俺生まれてきたんだろう・・・・生まれてこなければ裏切られることなんか・・・ない、のに」
そうだよ・・・・死ねばいいんだ。この雨で凍え死ねばいいんだ。
そう、考えた瞬間・・・
「朱莉君っ・・・・!!」
「・・・!?隆樹・・・兄・・・・!」
俺の目の前にはズブ濡れの隆樹兄さんがいた。隆樹兄さんの目は、いつもの穏やかな目ではなく、焦っていた目をしていた。
「なん・・・で・・・・・」
「心配したから来たんだよ・・・!!雨降ってるし、風引くといけないから・・!」
兄弟じゃないって事知ったのに・・・まだ、兄貴を演じている。お願いだから・・・やめてくれ。辛いだけだから・・・!!
「・・・・んで」
「・・・?」
「何で来たんだよっ・・・!!もう、俺には関わんなよ!!!・・・・お願いだから・・・兄貴を演じないで・・・・辛いから・・・・真実を知った上でそんなことされてもい・・・・・・っ!!??」
俺が言い切る前に口を塞がれた。そう、これは手ではない。唇だった。
「・・・・・んっ・・・・!!」
「お願いだからそんな悲しい顔をしないで。・・・・辛いのは僕も同じ。けど、真実を知らない君が普通に僕達に接しているの見ているのが辛いんだ・・・・・。言おう、言おうと思っていた・・!・・・けど、まさかあんな状況で言うとは僕も思ってはいなかったんだ!!・・・・兄さんも、そう思っている。」
「じゃぁ・・・・じゃぁ何で亜佐美さんは!!俺に嘘を言ったんだよ!!・・・・教えてよ・・・・お願いだから真実を言ってよ!!」
・・・・もう、こうなったら真実を知るしか俺には手段がなかった。
「・・・・僕達にもわからないんだ。いくら僕等でも、数回しか会ったことがないんだ。・・・ごめんね」
「亜佐美さんに聞くしか・・・・ないってこと・・・・なのか・・・」
「そう、なるね」
「そんな・・・・・・・・っくしゅっ・・・!」
「・・・・これだけ濡れちゃ風邪引くね。帰ろっか」
「・・・・もしかして・・・・あの家?」
あの家・・・・つまりさっきまでいた家だ。
「っそんなの・・!!嫌だ。行きたくない!」
「ワガママ言わないの。行くったら行くの」
「嫌だ・・・っ!」
そう言うと、隆樹兄は1人だけで帰るかと思うと俺の側に来た