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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・弐】パッパヤッパー

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「…わーったよ; とにかくお湯だなお湯」
京助が口の端を上げて言うと部屋を出て行った
「俺達も行こうか悠助」
慧喜が悠助に言う
「でも僕けんちゃんが心配…」
悠助が乾闥婆を見ると乾闥婆がにっこり笑った
「ありがとうございます悠助…僕は大丈夫です…だからすいません…少しだけ席を外してくれませんか?」
乾闥婆が言うと少し考えた後悠助が頷いた
「すまんな…栄野弟」
迦楼羅も言う
「ううん…いいのけんちゃんもかるらんもかるらんとけんちゃんが大事なんだね」
悠助が笑いながら言った
「え…?」
「そうだぞ」
悠助の言葉に乾闥婆と迦楼羅がそれぞれの反応をした
「僕も慧喜大事なの」
悠助が言うと慧喜が嬉しそうに笑う
「乾闥婆は大事だ」
迦楼羅が言うと乾闥婆が眉を下げた後俯きそして顔を上げる
「…そうですね…大事です」
小さく乾闥婆が言った

「洗面器~洗面器~…」
廊下から「アミダババァ」の替え歌を歌っている京助の声が聞こえた
「おっまた~」
京助が足で戸を開けて部屋に入ると持ってきたヤカンと氷の入った洗面器とタオルを床に置いた
「コレで温度調節して丁度よくしてやりよ?」
京助がヤカンを指差して迦楼羅に言う
「わかった」
迦楼羅が頷く
「ありがとうございます京助」
乾闥婆がお礼を言った
「じゃ…なんかあったら呼べよ?」
京助が言いながら立ち上がり開けておいた戸から廊下へ出ると悠助と慧喜も続いた

湯気の立つ洗面器に乾闥婆が手を入れた
「…丁度いいです…」
「そうか」
乾闥婆が言うと迦楼羅が目を細めて笑った
「痛かったら言うんだぞ?」
チャポっとタオルを湯に浸した迦楼羅が言うと乾闥婆が背中を向けたままで頷いた
「…痛いか?」
迦楼羅が黙ったままの乾闥婆に聞くと乾闥婆が首を振った
湯気にほんのり混じった血の匂いが部屋に広がる
「迦楼羅…」
ずっと黙ったままの乾闥婆が口を開いた
「なんだ?」
迦楼羅が手を止めて聞き返す
「今日…晩御飯竜田揚げにしてくれないかハルミママさんに聞いてみますね…」
乾闥婆が言う
「…ああ…楽しみにしている」
迦楼羅が笑った

「何で俺が付き合わなアカンねん;」
正月スーパーの生肉売り場で黄色い買い物籠を持った京助が呟いた
「つべこべ言わないんだっちゃ」
緊那羅が【本日のお買い得!! 3時からのシークレットセール】と書かれている表示を見てそれから並べられている肉を見ながら言った
「今日は竜田揚げに決定したんだっちゃから…肉がなかったらはじまらないっちゃ」
買い物籠に二キロで780円だという鳥胸肉を入れて緊那羅が歩き出す
「付け合せ…付け合せ…」
緊那羅が野菜売り場のほうに足をむけた
「緊那羅味噌汁ふのりとイモがいい」
京助が緊那羅に言う
「この間もそう言ってなかったっちゃ?;」
緊那羅が足を止めて言った
「好きなんだよいいじゃん; 買い物付き合ってるんだし」
「…わかったっちゃ;」
膨れた京助に緊那羅が承諾の返事をした
「すっかり主婦だよナァお前」
「ハイハイ」
京助が言うと緊那羅が大根を選びながら適当に返事を返す
「お前等はすっかり夫婦だよナァ」
「はッ!?;」