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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第九回・弐】パッパヤッパー

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「…やりますね」
ヒラヒラと宙を舞っている薄水色の布を見て乾闥婆が言った
「今は褒められても嬉しくないんだやな」
コマが前足の爪についていた薄水色の布を払いながら言う
よく見ると乾闥婆の背中に結んであった布が千切れていて背中も少し服が切れうっすらと赤くなっていた

「あの人だかりはもしかしなくて…もって…何やって…;」
ようやくソレっぽい騒ぎにたどり着いた阿修羅が言葉を失った
「どうしたのだ;」
阿修羅の背中から迦楼羅が聞く
「何で戦ってるんかいな;」
阿修羅が呆然とした口調で返す
「な…ッ?;」
阿修羅の言葉に迦楼羅が身を乗り出すと目の前の人垣の間から見えたのは顔をゆがめながら後ろに飛ぶ乾闥婆の姿と乾闥婆に牙をむく二匹の大きな犬
聞こえるのは拍手と喝采と野次、そして興奮していると思われる攻撃的な唸り声
「だっ…だッ!!;」
乾闥婆の元に駆け出そうとした阿修羅の頭を踏み台にして迦楼羅が飛んだ

「おおおお!!」
「凄い凄い!!」
突如大きくなった正月町民の歓声に乾闥婆が顔を上げる
「か…」
そして目を見開いてそのまま止まった

「かるらんのいいトコどり~…;」
地面にうつ伏せになったまま阿修羅が呟く

「退かんかッ!!」
迦楼羅の声が響くと一瞬コマとイヌがすくみ上がった
「何をしているのだお前等は!!」
乾闥婆の前に降り立った迦楼羅が二匹を睨みながら言う
「何をしてるのだは貴方の方ですッ!!」
「だっ!;」
乾闥婆が迦楼羅の髪を思い切り引っ張って声を上げた
「何をするッ!!;」
「何できたんですか!!」
迦楼羅が怒鳴ると乾闥婆も負けじと言った
「貴方から力を吸い大きくなったということは貴方がココに来ればまた力を吸われることになるんですよ!?」
「いだだだだッ!!;」
乾闥婆が今度は両方の髪を引っ張って言う
「仕方なかろうッ; 心配だったのだッ!!」
「僕の心配は無用だと言ったはずですッ!!」
「しかし心配だったのだと言っているではないかッ!!;」
「しかしでもカカシでもありませんッ!! 貴方は自分の心配をしてくださいッ!!」
ギャーギャーと言い合いをはじめた二人に正月町民からざわめきが起こり始めた
「何? ドラマの撮影だったの?」
「猛獣ショーじゃなく?」
「そういえばあのでかい犬話してた気がする」
「最近の技術は進んでるね~」
等という気の抜けた話し声が聞こえてきた
「ただでさえ貴方は…ッ!!」
乾闥婆が言いかけて顔をゆがめた
「…けん…」