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昇神の儀

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 高見沢は工場経験が長く、過去何回もこういった竣工式に立ち合ったことがある。そのためか要領はわかっているつもりだが、今一度式次第の順番を目で追って確認する。
 一般的に執り行われる竣工式は式場に入るところから始まるのだ。高見沢は専門的には詳しく知らないが、自分の知る範囲の中で一つ一つ復習する。

(一) 手水の儀
 式場入口に手水があって、手水役から水をかけてもらい、清めるのだったなあ。もうここにいる人たちは、それは終わってるぞ。

(二) 全員着席
 特に招待者は、こちらから案内して、決まった席に着いてもらうんだよなあ。

(三) 修祓(しゅうばつ) 
 祭事に先立って祭壇や玉串、それと参列者を、神主が祓(はら)い清める儀式だ。
「掛けまくもかしこき イザナギオホカミ……」、神主がこんなのを読み上げて、最後に「恐(カシコ)み 恐み白(マヲ)す」というのだったかな。

(四) 降神の儀(こうじんのぎ)
 これは確か招霊の儀式。神様を招いて、天から降りてきてもらうやつだよ。みんな手水と修祓を済ませておかないと降神してもらえないんだ。
 そのために神主が、警蹕(けいひつ)と言われる「ウオ−」という声を張り上げるのだったよなあ。

(五) 献饌(けんせん)
 神饌(しんせん)、つまり供物(くもつ)を供える儀式だ。
 今日の魚のお供えはプラスチックの鯛だけど……。最近は簡略化されて、神酒の徳利の蓋を取るだけになってるかな?

(六) 祝詞奏上(のりとそうじょう)
 全員起立で敬意を表し、神主に厳かに祝詞を上げてもらう。とにかく「なになに白(マヲ)す」で終わるんだよ。

(七) 清祓の儀(きよはらいのぎ)  
 新しい建物や設備の使用前に、全体を清め祓う儀式。これが完了して竣工式となるんだ。

(八) 竣工式
 工事の無事完了を感謝する。これで新設備のお披露目というか、スタ−トだ。
 今日は事業本部長に稼働ボタンを押してもらう段取りとなっている。


作品名:昇神の儀 作家名:鮎風 遊