恋愛掌編集
水平線に落としたもの
「水平線ってさあ。」
「綺麗だよな。」
「水平線ってさあ。ねえ。」
構図を取るように指を四角を作る。
「こうやって海だけ見ると、すぐそこにあるような感じするよね。」
「ああ、そうなあ。」
「なんだか、ちょっと手を伸ばせば引っかけられそう。」
「それ良いなあ。」
「ふうん。」
「手が引かかるなら、海でも引っぺがせそう。」
「壮大だね。」
「歩いて外国行けるかな。」
「船苦手だもんね。」
「泳げるのになあ。」
「飛行機は。」
「乗ったこと無い。」
「同じく。」
「海の底歩いてみたいな。」
「そうすれば、あれも見つけられるかな。」
私はつい、水の中を見つめてしまう。
「なんだ、まだ気にしてたんだ。」
「うん。」
「そうか。」
「そう。」
「海を見るのも好きなんだけどさ。」
「うん。」
「海を泳ぐのも好きなんだよなあ。」
「私はそんなに好きじゃないなあ。」
その言葉に俺は笑った。
「良いよ。別に。」
「そうか。」
「うん。」
「そうか。」
「新しいの買おうかな。」
「そう言うんでもないんだろ。」
「うん。」
「そうな。」
そう言って俺は立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ行くわ。」
ズボンを引っ張られた。
「なに。」
「私も行く。」
私はズボンを引っ張って立ち上がる。
「海見るの好きなんだろ。」
「海見るのも好きだけどね。」
「うん。」
「海見るよりも好きなこともあるんだよ。」
「なに?」
「さあねえ。なんだろうね。」
「ふうん。」
そう言うと彼は笑った。