恋愛掌編集
いばら姫
昔々とある国にそれは美しいお姫様がいました。
お姫様は優しく明るい人柄で、国の人々に敬愛されていました。
そんなお姫様には将来を誓い合った国の勇敢な騎士が居ました。
若く美しい二人に周囲の人々は笑顔で二人を祝福していました。
しかし、ある時戦争を起こり国の騎士は戦場へと向かい、
そこで騎士は行方分からなくなりました。
初めは騎士の安否を心配していた周囲の人々も、
騎士が帰る気配がないことを見て段々と態度を変えていきました。
すぐにお姫様の元へ結婚の話がいくつも持ちかけられるようになります。
悲しみに暮れていたお姫様には、その人々が余りにも醜く映ってしまったのです。
人々に嫌気がさしたお姫様は国を抜け出し捨てられたお城へと逃げ込みました。
そして誰も来れないように城の周囲やカベ、城の中、全てをイバラで覆い尽くしました。
そこでお姫様は一人で泣き続けようと決めたのです。
お姫様が居なくなったことに気がついた国の人達は、古い城へと兵を向かわせました。
しかし多くの兵士はイバラの棘に傷つき血を流し、鎧を着た者はイバラに絡まり身動きが取れなくなり、城へと向かった多くの人々は逃げ帰ってきたのです。
やがて人々は鬱蒼と刺々しく人々を拒絶する、その城を悪意を込めてイバラの城と呼び始めました。
どうしても姫を連れ戻す出来ないために国の人々も遂には諦め
「もはや、姫も死んでしまっているだろう。」
誰ともなく、そう思いはじめていました。
幾月か経った頃。
最早誰一人としても近づかなくなったイバラの城に一人の若者が訪れました。
「行かぬ方が良い。」と止める村人に「約束があるんです。」と笑顔で答えて、若者はイバラの城の中へと入っていきました
若者は道をふさぐイバラを切り、絡まった蔦を優しくほどき、深く棘が刺さるのも構わずに城へと進み続けます。
何もかもが棘に覆われ暗い城の中を歩き回りました。
そして夜が明けるまで城の中を探し続け、やがて若者はお姫様を見つけたのです。
小さく固まったお姫様には無数のイバラが絡みつき、その体は最早冷たくなっていました。
若者はお姫様を抱きしめました。
お姫様に絡みついたイバラが、若者の肉を突き刺し血が吹き出しました。
そして流れ出た血が、お姫様の冷たい体をつたい、姫の体に熱を与えていきました。
熱と気を取り戻したお姫様が若者を見て驚きました。
若者は将来を誓い合った騎士だったのですから。
「姫、帰るのが遅くなりました。さあ一緒に帰りましょう。」
お姫様は首を振りました。
「ダメです。私の体は薔薇の刺でボロボロとなり、心はいつの間にか醜くささくれてしまいました。私はもう陰気なイバラなのです。貴方にはふさわしくありません。」
「姫。知っていますか。イバラの花はとても美しいのですよ。姫の笑顔は今も綺麗な花です。」
昔々、綺麗なバラに囲まれた城がありました。
その城の王様とお后様は優しく美しく、人々に永く敬愛されたと言うことです。