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恋愛掌編集

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遺伝子の叫び


「一つになりたい。」
一目見ただけで全身の遺伝子がそう叫び出した気がした。
思わず、そのままの言葉を言いかけそうになった。

彼女はあまりにも華奢だった。
痩せているのではなく、肩が細かった、指が細かった。
あの白い腕を持てば折れてしまいそうな気がした。
フワフワと揺れるグレーのスカートから見える足は、触らなくても滑らかに見える。

俺が話しかけると彼女は小さな目の大半を占める瞳を落ち着きなく動かす。
男性に誘われることに馴れていない様子で、困惑しているようだ。
しかし、驚いているようだったが、嫌がっている様子はなかった。
俺は何度も何度も頼み込み、最後には頭を下げて頷いて貰った。

喫茶店に入り、俺は珈琲を彼女は紅茶を注文する。
俺は砂糖をニ個、彼女は砂糖を三個。
彼女は熱いカップに薄い唇をつけて、茶を口の中に入れる。
俺は彼女のことを聞いた。
最初は当惑していた彼女も、好きなものの話は嬉しそうに話した。
本の話をするときは、彼女の目は細くなり、透き通った肌が赤く染まったように見える。
俺は話が途切れないように、ずっと色々なことを聞いていった。
話していることは殆ど分からなかったが、彼女のか細い声を聞いているだけで心地良かった。

それから何度も彼女とは連絡を取り逢瀬を重ねて親しくなっていった。
彼女は余りにも身持ちが堅く、それでいて鈍なもので、
何度好きだと言っても、友人として好きなのだとしか思っていないようだった。
仕方ないので最後には結婚して欲しいと言って分からせた。
その時彼女の細く長い髪が立ちそうな程驚いた顔をみせていた。
そうして、恥ずかしそうに小さな頭を縦に振ってくれた。

今俺は彼女の裸体を抱きしめている。
遂に彼女と交わるときが来たのだ。
そのとき、全身の遺伝子が叫び出した気がした。
「俺らは彼女の遺伝子と一つになれないんじゃん!」と。

作品名:恋愛掌編集 作家名:春川柳絮