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刻の流狼第三部 刻の流狼編

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「ではそう言う事で、お判りになられたら、私にお知らせして下さい。それと、ずるはいけません事よ。ソルティーに聞かずに、答えを見付けて下さい。まあ、たとえお知りになられたからと言って、お出来になられるとは思いませんけど」
「ううううううううう」
 ミルナリスは更に恒河沙に追い打ちを掛けてから、涙を一杯に溜めた彼に微笑むと、ソファーの後ろに廻って愛おしそうな声でソルティーに話し掛ける。
「私、この館の方達に、遅ればせながらですけど、ご挨拶をさせて戴いてきますわ。勝手に失礼させて貰っては申し訳ありませんもの」
「あ……ああ…」
 漸く戻りかけたソルティーの思考だったが、ミルナリスが彼の顔を両手で自分の方を向かし、深く唇を重ねた時にまた停止した。
 視線だけが自分とミルナリスを見て固まっている恒河沙に向いているが、引き剥がす前に彼女から離れてしまう。
「では行って来ます」
 ソルティーには微笑みを、恒河沙には意地悪な笑みを見せ、ミルナリスは姿を消さずに扉にゆっくりと歩く。
 途中倒れていた須臾に「邪魔ですわよ」と声を掛け、手も触れず彼の体を居間に移し、扉の手前でハーパーに振り返る。
「一緒に来て戴けませんか? 私一人が参りましても、信用が得られませんから」
「断る」
「どうせお暇でいらっしゃられるのでしょう? 来て戴けますか、と言うより、来なさい」
 ミルナリスの周囲にどす黒い気配が漂い、ハーパーはそれに圧倒されて体が勝手に反応する。ぎくしゃくとした動きでミルナリスに従い、彼女の力を体で感じた。
――何という者を主はお連れになられたのだ。
 名も知らぬあの男の様に、周囲に力を見せ付けないだけ、彼女の存在は質が悪い。
 喋らずに、ただ座っているなら、普通の子供と変わりがない。周りに警戒を抱かせない姿と、並々ならない力。そして、性格の悪さに、これからを思いやられた。


episode.26 fin