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刻の流狼第二部 覇睦大陸編

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 前方に広がる見慣れた森を見渡し、何時も通りの子供らしからぬ笑みをミルナリスに見せるが、事実を知らない者には心の内を隠す笑みかも知れない。
「クスクス……。貴方から運命等と言う言葉が聞けるとは、思って居りませんでしたわ」
 ミルナリスは口元を片手で覆い、その姿にニーニアニーは片眉を心外そうに上げた。
 外見はどちらも子供で在りながら、その言葉や仕種の総てが、大人以上の何かを感じさせる。
「決められた物事に逆らいたくなるのも、運命だと余は思って居るのだよ。ソルティアスには悪いが、余はそれが精一杯だ」
「……そうですわね。ウォスマナス様が眠りについて居られる今は、確かにそれが精一杯ですわね」
 そうして漸くミルナリスもニーニアニーの横に立ち、窓からの景色に目を移した。
 懐かしさと寂しさを含んだ瞳を揺らめかせながら。
「何時になれば目覚められるのか」
 深い溜息をつくニーニアニーを軽く笑いミルナリスは最後にこう言った。
「それが判れば私も苦労は無いのですけれど、何分あの方達はお寝坊さんですから」
 我が子に呆れる母親の様な彼女の言葉に、ニーニアニーは自然と笑顔になり、また森へと視線を移し、彼女の姿が消えるまで黙って見続けた。


episode.15 fin