刻の流狼第二部 覇睦大陸編
「一度失った命の使い道など、他に考えつかなかった。お前には悪いが、早くアルスティーナ達の仇を打ち、彼女と共に眠りに就きたい。今はそれ以外を考える事が出来ない」
今更自らの手で死を選べないのなら、第三者に敷かれた道を歩き、心残りを総て精算する事しか術が無かった。
それが自分にとって、本当に最善の事なのかを判断する要素は無く、ハーパーですら自分の行動を止める言葉を持っていない。
ただ、責任や義務ではなく、どうしても拭いきれない恨みと憎しみだけが、ぶつける場所もなくソルティーの内に存在する。
「矢張り主は強き方だ。我はその姿を父に見て戴きたかった」
誇らしげに自分を見つめる視線をソルティーには受け止める事も、放り出す事も出来ず、
「多分見ている。アルスティーナが私の内に居たように、皆、私とハーパーの内に居続けてくれる。そう信じなければならないのだろう、皆の死を無駄にせぬ為に」
自分を信じて死んでいった者達の為にも、そう言い聞かせる。
信じ切れない希望ではあるが、信じて居る限りは、心を留める事が出来そうな予感と共に。
episode.8 fin
作品名:刻の流狼第二部 覇睦大陸編 作家名:へぐい