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茶房 クロッカス その3

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 何とそこでは礼子さんが飲み物の準備をしてくれていた。
《あっそうだ、乾杯をしなくちゃ!》
 俺は慌ててカウンターの中へ戻ると、みんなのグラスを用意した。
 そして、カウンターのそばに置いた大きなクーラーボックスを手で指して、
「みなさーーん! 今から乾杯をするので、この中から好きな飲み物を取って下さい。この後もセルフですから、自由に飲み物も食べ物も取って下さいねー。遠慮してるとなくなっちゃいますよー。いいですねぇー!」と、大声で言った。
 みんながゾロゾロと飲み物とグラスを手に取った。
「さぁ皆さん! 本日の参加予定の方はほぼ全員揃ったようなので、そろそろパーティーを始めたいと思います。が、その前に俺、いや私から一言……」
 やはりこういう時はきちんと言わなくっちゃあと思い、俺がそういい直すと、店内から突然掛け声が上がった。
「気取るこたぁねぇぞー!『俺』で大丈夫だぁー!」と。
 その声に、店内は一瞬爆笑の渦に巻かれた。
「アハハハハハ……!!」

 笑いが少し収まってから俺は言葉を続けた。
「えー、では改めまして……。本日は皆様、この名も知れぬ小さな喫茶店『茶房クロッカス』のクリスマスパーティーに、お忙しい中ご参加下さいまして、本当にありがとうございます!」
「――実は俺にとっては、去年までのクリスマスは独りぼっちで、誰も一緒に祝う人もなく、淋しいだけのクリスマスでした。ところが今年のクリスマスは、このように沢山の家族同然の皆様と、この日、この時間を共に過ごせることは、この上ない幸せ…で…す……うっ…」
 店内に拍手が湧き上がる中、図らずも涙ぐんでしまった俺の脇腹を、沙耶ちゃんはツンツンと突付くと「マスター、頑張れ!」と、小声で言った。
 俺は、沙耶ちゃんを横目でチラッと見ると「うん!」と頷いて、また話し始めた。
「――失礼しました。つい嬉しくって……。えー、見ての通り大したご馳走もありませんが、すべてセルフになっていますので、好きな物を好きなだけ自由に飲んで食って、今日のクリスマスパーティを皆さんと共に楽しく過ごして下さい。それでは皆さん、グラスの用意はいいですか? 乾杯しますよぉー!」
「メリークリスマス! カンパーイ!!」
「カンパーイ!!」
「メリークリスマス!!」
 店内にお客さんたちの声が響き渡り、良くんたちが演奏するクリスマスの音楽と共に、いよいよ楽しいパーティが始まった。