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茶房 クロッカス その3

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 そして、ふとカレンダーに目をやると、間もなく俺の両親の、三回目の命日が迫っていた。
 忘れることのないように、赤いマジックで前もって丸印を付けておいた。
 早いものだなぁ、とつくづく思う。
 時々あの時の情景が、記憶の襞からひょっこり顔を出す。

 あの日は俺がクロッカスをオープンしてちょうど二年経った頃だった。
 朝起きると、親父とお袋が何だかそわそわと出掛ける支度をしている。
「どこか行くの?」と、俺が聞くと、
「あれっ? 言ってなかったっけ? お父さんと二人で四国の金比羅山にお参りに行って来るから、ちゃんと留守番しといてちょうだいね」 
 と、お袋が言った。
「何だ、そうなの。で、いつ帰って来るの?」
「一応、二泊三日の予定だから、後のことを頼むよ」
「じゃあ俺の食事は?」
「何言ってんの、小さい子供じゃあるまいし。そのくらい自分でしなさい」
 そう言うと二人はいかにも楽しそうに、親父が運転する車に乗って出掛けてしまった。
 二人を見送ったその時には、まさかそれが生きてる両親を見る最後になるとは思ってもみなかった。

 ところが、両親が帰って来る予定日の午後のこと。
 やっとランチタイムが終わってホッとした途端、店の電話が鳴った。
 それは四国の警察署からの電話で、
「ご両親が事故に遭い、現在危険な状態です。すぐに来て下さい」 
 という内容だった。
 俺は俄かには信じられなかったが、電話で教えられた四国の病院へ行くため急いで店を閉め、表に、急いで作った臨時休業の札を出して、自転車をダッシュで走らせて自宅に帰った。
 取り合えず泊まりになることも想定して着替えをバッグに詰めると、その足で駅へ向かった。