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茶房 クロッカス その3

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 その教えられた病院に辿り着くのには、かなりの時間を要した。
 病院の受付で名前と事情を話すと、「あぁ、それなら……」と、三階の部屋番号を教えられた。
 エレベーターで三階に上がり、探しながらその部屋の前まで行くと、眼の鋭そうな男が一人立っていた。
 俺がドアの前に立ちナンバーを確認していると、その男が聞いてきた。
「もしかして、前田悟郎さんですか?」
「はい、そうですが……」

 もしかしたらとは思っていたが、やはりその男は刑事だった。
 俺が来るのを待っていてくれたらしく、名前を名乗ると、事故の状況をざっと説明してくれた。
 親父たちの容態が気になっていた俺は、その男の言葉を遮り、
「そんなことより親父たちは?」と聞いた。
「あぁ、それが……、誠に残念なんですが……、先ほど息を引き取られました」
「………あぁ…」
 俺は一瞬目眩がしたような気がしてふらついた。
「だ、大丈夫ですか?」
 その人は慌てたように俺の腕を掴んでそう言った。
「すみません、大丈夫です。親父たちに会わせて下さい」
 そう言うと、その人は黙ってその部屋のドアを横にスーッと滑らせて開け、中へと目で合図した。
 俺は急かされる気持ちとは裏腹に、ゆっくりと病室に足を踏み入れた。
 音のない静かな空間の中で、ベットを二台並べたその上に、親父とお袋がそれぞれに寝かされていた。