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茶房 クロッカス その3

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「マスター、小橋さんですよ!」
 沙耶ちゃんの声にハッとした。
「やぁ、小橋さん、いらっしゃい」
「悟郎ちゃん、今また妄想にはまってただろ?」
 そう言うと、小橋さんは愉しそうにクックッと笑った。
「もうー、そんなことないですよ! 小橋さんは人が悪いなぁー、あははは」
 俺も笑った。
「――そんなことより、クリスマスパーティーのことは、沙耶ちゃんから聞いてるんですよねー」
「あぁ、聞いてるよ。楽しみだよなぁ」
「もうパーティー券できてるから、良かったら持って行って下さいよ」
「おう、そうなんだ……。なかなか準備がいいじゃないか。それじゃ、おりゅうさんの分も一緒に二枚もらって行くかな」
「沙耶ちゃん、小橋さんが券二枚だって!」
「はぁーい、分かりました」
 そう言うと沙耶ちゃんは、すぐに券を二枚小橋さんに渡し、代金6千円を受け取っていた。
「あ、小橋さん、プレゼント交換もする予定だから、何かプレゼントを持って来て下さいよ」
「えっ、そうなの? それは楽しいかもな。じゃあ、おりゅうさんにも言っとかないとね」
「あぁ、そうして下さい。忘れないように頼みますよー」
「あぁ、わかったよ」
 その後、コーヒーを飲み終わって帰る小橋さんを玄関まで送ろうとした時、珍しく店の電話が鳴った。
「はい、茶房 クロッカスです」
「あ、もしもし、あのう、お店の前に貼ってあったポスターを見たんですけど……」
「あっ、クリスマスパーティのですかぁ?」
「はい、それです。で、申し込みしたいんですが、いいですか?」
「あ、ホントですか? ありがとうございますっ」
「では、参加者のお名前をお願いします。あ、本名じゃなくてもいいですよっ」
「あ、そうなんですか? じゃあ私はレッカーと言います。もちろんニックネームですよ。彼女と二人で行きたいので、券を二枚取っておいてもらえますか?」
「はい、ありがとうございます。二枚ですね。で、その彼女さんのお名前は?」
「彼女は、フィットで宜しくお願いします」
「分かりました。フィットさんですね。じゃあ当日は名札を用意しておきますので、プレゼント交換用のプレゼントをお持ち下さい。お待ちしてますよ」
「じゃあ、楽しみにしておりますので、当日は宜しく」
 そう言って、レッカーさんと名乗る人からの電話は切れた。
「沙耶ちゃん、やった! お客さんだよ! クリスマスパーティに来てくれるってさっ」
「マスター、ホントですかぁ?! 良かったですぅ」
 沙耶ちゃんもにっこり微笑んで喜んでくれた。
「もっとたくさんお客さんが来てくれるといいですねっ」
「うん、そうだよな」
 その日はもう新たな客もなく、沙耶ちゃんが帰った後、俺も店を閉めて家に帰り、テレビを少し見た後、いつものように独り淋しく眠りについた。