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茶房 クロッカス その3

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 あっ! そうだ。
 重さんが帰ったあと突然、俺はあるアイディアを思いついて、早速沙耶ちゃんに相談した。
「なぁ、沙耶ちゃん。今思い付いたんだけどさぁ、パーティーに来たお客さんに、名札を付けてもらうってどうだろう?」
「えぇーっ! 名札ですかぁ? それはちょっと難しいんじゃないですかぁ?だって、中には名前を知られたくない人だっているでしょうし……」
「うん、それはもちろんだよ! だから本名じゃなくて、自分の好きなニックネームを書いてもらうんだよ!」
「ニックネームかぁ……」
「うん、俺はできれば、お客さん同士にも仲良くなって欲しいんだよ。でも、相手の名前が分からなければ、まず自己紹介からしなくちゃならないだろう? 本名じゃなくても、ニックネームでも名札を付けていたら会話しやすいと思うんだよ。どう思う?」
「あぁ、そういうことならいいかも知れませんね」
 沙耶ちゃんはにっこり微笑んだ。
「じゃあ、名札の準備もしなくちゃな!」
「あ、マスター、それも私が準備しときますよ」
「えっ、そうかぃ? 何だか悪いなぁ、何もかも沙耶ちゃんに任せちゃって……」
「大丈夫ですよ。私、こういうことするの好きなんですから。フフッ」
 俺は安心して沙耶ちゃんに任せることにした。
「あ、必要な経費はちゃんと請求してくれよ」と言葉を添えて。
 まだ券を買ってない人で、沙耶ちゃんが連絡していた他の面々には、折りを見て直接沙耶ちゃんが渡してくれるらしい。本当に沙耶ちゃんは、若いけど頼りになる存在だ!
《うん? いや待てよ。もしかしてそれって、単に俺が頼りなさ過ぎなだけだったりして……》
 そう考えると何だかおかしくなって、クックッと笑ってしまった。
 沙耶ちゃんが怪訝な目で俺をジロッと見た。
 俺は慌ててそっぽを向き、鳴らない口笛を吹いてみたりした。
 沙耶ちゃんは今度は、呆れたような顔で俺を見ていた。
《本当なら、沙耶ちゃんぐらいの娘がいたっておかしくない年なんだよなぁ、俺。沙耶ちゃんが俺の娘だったら良かったのに……。あっ、その前に嫁さんが必要だったわ。あはは……》と、内心思って笑った。
 そして俺の妄想は、また優子へとつながっていった。
《優子、今頃は……》