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茶房 クロッカス その3

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「――ところでマスター、表にポスターが貼ってあるのをチラッと見たんですが、クリスマスパーティーとか……。ここでやるんですか?」 
 みのさんの問いに、
「そうなんですよ。初めての試みなんで、どんな風になるのかは開けてみてのお楽しみなんですけどね。あ、そうだ! お二人も是非参加して下さいよー! きっと楽しいことになると思いますよ!」
「へぇー、なら俺は参加しようかなあー」
「おぉ、なおごんさん、それじゃ早速チケットを買って下さい。三千円ですから」
「――沙耶ちゃん、なおごんさんにチケットお渡しして」
「はい、マスター」
「あ、私も参加させていただきますよ」
「あっ、じゃあ沙耶ちゃん、みのさんにもねっ」
「はい、分かりました」
「あ、そうそう。当日はプレゼント交換をするので、何でもいいからプレゼントを用意して来て下さい」
 俺がそう頼むとみのさんが、
「ほう、プレゼント交換ですか? 益々楽しみです」
 そう言った後、頭を傾げて尋ねた。
「――で、どんな物を用意したらいいんだろう?」
「いや、別に大した物じゃなくてもいいんですよ。そうだなぁ、金額にして二千円くらいのもので……。みんなが喜びそうなものがいいかな?」
「ふぅーん、みんなが喜びそうな物か……、それがなかなか難しいよなぁ〜」
 なおごんさんが困ったように腕を組んで唸った。

 それからしばらく雑談を交わすと、二人はコーヒーを飲み干し、
「それじゃあまた、クリスマスに来ますね」と言葉を残して帰って行った。
 俺の手元には、二人が持って来てくれた小説の原稿が残った。
《今晩から楽しみができたぞっ!》 
 家に帰って、寝る前にその小説を読むことを考えると、俺は嬉しくなってニタァ〜と笑った。

 二人が帰った後少しして、いつものように仕事帰りの重さんがやってきた。
 やけにニヤニヤしている。
「重さん、どうした? 何か良いことでもあったのかぃ?」
「ん? 何で悟郎ちゃん分かるんだよ?」
「何でって……。そんだけニヤニヤしてれば、誰が見たって分かるだろうが」
「――なぁ、沙耶ちゃん!」
 俺はそう言って沙耶ちゃんに声を掛けた。
「ふふふっ、重さんもしかして、夏季さんと映画に行ったんですかぁ?」
「えっ!?」
 そう声を発すると、重さんは瞬く間に赤くなった。
「おっ! そうなのか? ついに行ったのか! 重さん」
「いゃぁ〜まあ、なっ。あはははっ……」
 そう言って頭を掻いた。
「良かったじゃないか!」
 俺は心底嬉しくなった。
 重さんは、クリスマスパーティの券を夏季さんの分までお金を払って、ちゃっかり二枚買って帰った。