小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

茶房 クロッカス その3

INDEX|82ページ/100ページ|

次のページ前のページ
 

「マスター、クリスマスなんだけどねっ」
「……は? あ、う……うん」
 沙耶ちゃんの声に、いきなり妄想の世界から戻った俺は、辛うじて返事だけはした。
「誰を呼ぶか決めてますぅ?」
「あぁ、そのことか。うーーん、まだ」
 俺がそう言った途端、沙耶ちゃんは呆れたようにこう言った。
「やっぱりねぇ〜。そうじゃないかと思ったんだぁ!」
「あぁ、面目ない…」(頭ポリポリ……)
「ふぅ〜、そうじゃないかと思って私、一応リストを作ってみたんですよ」
 沙耶ちゃんはそう言うと、エプロンのポケットから一枚の紙を取り出して俺に見せた。
「どれどれ……」と、俺はその紙を手に取って見た。

 その紙には名前がずらーっと並んでいた。
 まず最初が重さんと夏季さん、それから小橋さんにおりゅうさん。次に良くんとその仲間数名。あぁ、京子ちゃんの名前もあった。それと、淳ちゃんと礼子さん夫婦。
 あれっ? コロさんと草愛さんの名前も書いてある。
 おやっ?! 姫ちゃんとみっこさんの名前まで……ええっー?
 俺はさすがに驚いて沙耶ちゃんに聞いた。
「沙耶ちゃん、この人たちはどうするんだぃ? どうやって連絡するつもりなんだい?」
「あぁ、その人たちですか? 大丈夫。私、ちゃーんと連絡先聞いてるんですよ」
「えぇー! いつの間にー?」
「ふふっ、だってコロさんと草愛さんには、写真を送るからって住所や連絡先を聞いたでしょ? あの後、マスターに頼まれて私、写真を送ったじゃないですか。そのお返事を貰ったんですよ。で、今でも時々連絡取ってるんです」
「えっ、そうだったの? 知らなかった!」
「へへへっ、ごめんね、マスター。黙ってて。でも別に隠してたわけじゃないんですよ。何となく言う機会がなくって……」
「まぁ、いいけどな。それでみんな来るのかい?」
「ええ、少し前に連絡してみたんですよ。そしたらみんな来たいって言ってましたよ。ただ、まだ少し先のことだから、もしかしたら都合で来れない場合もあるかもって言ってましたけど……」
「うん、それは仕方ないよなっ。じゃあもう、ある程度の人数は決まってるんだな……」
《さすがに沙耶ちゃんは手回しがいいや》
 そう思いながら俺は手元の紙を見つめていて、ふと気が付いた。
「……あれっ? でも他の人はともかく、姫ちゃんは海外にいるんだよなぁ。とても来れないだろ?」
「それがねっ、マスター。超ラッキーなことに、ちょうどその頃、里帰りで帰って来るんですって!」
「へぇー、そうなんだ。それにしても沙耶ちゃん、海外に住んでる姫ちゃんとも手紙のやり取りをしてるのかぃ?」
「うぅん、姫ちゃんとはメールを交換してるんですよ」
「ほおぅ、メールということは、沙耶ちゃんパソコン持ってるの?」
「ええ、もちろんですよ!」
「そうなんだ……。俺は持ってないし、使ったこともないんだけど……」
「マスターもパソコン買って、ネットにつないでみたら? 楽しいですよ」
「ふぅーん、そうだなぁ……」
 俺はチラッと心が動いた。
「――まあ、それはともかく、来る人はこれだけかぃ?」
「ええ。あとはこれ以外に、ポスターを見て来るお客さんがどのくらいいるか? ですよね」
「うん、そうだな。どれくらいの人が来てくれるんだろうなぁ?」
「何にしても楽しみですよね!」
「うん、そうだな! 去年なんて何にもないクリスマスだったもんな。今年は賑やかな日になりそうだ!」
 俺は今からワクワクしてきた。
《それにしても、沙耶ちゃんはやっぱり頼りになるなぁ》と、改めて思った。