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茶房 クロッカス その3

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 しばらく歩いた所に、川の上に迫り出すように大きな岩があった。表面は平らでゆっくり寛げるほどの広さもあり、その岩の上には、これまた見事な紅葉の枝が張り出している。
「まぁ、素敵ー!」
 おりゅうさんが感嘆の声を上げ、コロさんは早速カメラのシャッターを押し始めた。
 俺たちはみんなでその岩の上に上がり、思い思いのポーズで川の流れと紅葉の赤い葉を愛でた。そんなみんなを俺もバカちょんカメラに収めた。
「さぁ皆さん、休憩にちょうどいいからハーブティーを召し上がりませんか?」
 おりゅうさんはそう言って、用意して来た紙コップを黒いリュックから取り出すと、人数分のお茶を注いで一人ひとりに手渡してくれた。
「うん、これはなかなか旨いもんですなぁ」 
 と、コロさんが相好を崩して言った。
「俺も初めてだなぁ、こんな飲み物は……。いつもは番茶ばっかりだもんでよー。なかなか旨いもんだなぁ」
 重さんは物珍しそうに一口一口じっくり味わいながら飲んでいる。
 草愛さんが突然、何の前触れもなく、本を読むように話し始めた。
「ちっちゃな可愛いあの子の
 まん丸真っ赤なほっぺたは
 パパにぶたれたせいなのか?
 それともママの口紅で
 ひとりでこっそり遊んだの?

 優しいあの娘が笑う時
 うっすら赤らむ可愛い頬
 俺が見つめたせいなのか?
 そしたら君はこう言った
 あなたの視線のせいじゃない

 ちっちゃな可愛いあの子の
 お手てがほんのり赤いのは
 冷たいお水を触ったから?
 いいえ、あの子のお手てが赤いのは
 もみじの恥じらい移ったから

 やっばりあの娘の頬が赤いのも
 きっともみじの恥じらい移ったから」

「――今、即興で作ってみた詩です。『紅葉の恥じらい』ってタイトルでどうかしら?」
 と、伏目がちに草愛さんが言った。
「ふぅーん、草愛さんて詩を書いたりもするんですか?」
 俺がそう問い掛けると、草愛さんは頬をポッと赤くして、
「いえ、改めてそう聞かれると恥ずかしいんですけど、たまにふっと思いついて書き留める程度なんですが……、結構こう見えて好きなんです。うふふ」
「そう言えば草愛さんは、学生の頃は文学少女だったよなぁ、オラと違って。あっはっは……」
「ほう、そうだったんですか?」
「まぁ、あの頃から比べるとずいぶん年を取りましたが、今でも気持ちはあの頃のままのつもりですわよ! うふふふ……」
 そう言って楽しそうに笑った。俺たちもつられてみんなで笑った。