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茶房 クロッカス その3

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「マスター、そろそろ行こうよ!」
 小橋さんの声にハッと我に帰った俺は、思わず腕時計を見た。もう午後の二時近かった。
「うん、そうだね、ちょっとのんびりし過ぎたかもしれない。行くかっ?!」
 それを合図にみんな身の回りの物を片付け始め、その五分後にはまた歩き始めた。
 お腹もいっぱいになり、歩くのも少しかったるくなった。みんなのペースも若干落ちてる気がする。それでもみんなの会話はやはり弾んでいた。

「そう言えば良くん、さっき見てたんだけど、手の指が結構長いけど、何か……そう、ピアノでもやってるのかぃ?」
 俺がそう尋ねると、
「よく分かりましたねぇ。実はピアノはもちろんですが、ギターなんかも好きでよく弾いてるんですよ」
「へぇーー、じゃあ音楽が好きなのかぃ?」
「はい、好きですねっ。今度マスターの店で弾いてあげましょうか?」
「えっ? 本当かい? それならいっそのこと店でのコンサートなんてどうだい?」
「そりゃあいくらなんでも大袈裟ですよ! あはははっ」
「じゃあ、コンサートが大袈裟なら、ライブなんてのはどう?」
「あぁ、ライブですか? まぁ、それくらいならいいかな? でも俺の演奏で誰か来てくれますかねぇ〜?」良くんは頭を傾げた。
「今は十一月だけど、来月のクリスマスになんてどうかな? もちろんそれなりにポップを作って店の前に張り出すよ。もし友達とかで演奏仲間がいるなら一緒に来てくれても構わないよ!」
「あっ! それは楽しそうでいいですねっ。仲間にも声掛けてみますよ!」
「うん、頼むな!」
 沙耶ちゃんが俺たちの会話を聞きつけてやって来て、
「へぇーー、クリスマスかぁ〜。楽しいかも……」
 と言いながら、早速他のみんなの所へ行ってその提案を話しているようだった。
《どうやら今年のクリスマスは楽しいことになりそうだ》
 そう思うと俺はワクワクしてきた。