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茶房 クロッカス その3

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「今日は本当に暑いですねぇ」
 さりげなく声を掛けてみた。
「本当にぃ、こんな日に花壇の手入れじゃきついでしょう?」と彼女。
「まあ、そうなんですけどね。なかなか……、ついつい先延ばしになっちゃうんで、思い切って今日やったんですよ」
「マスター、このコーヒー美味しいですね。なぁー花織」と彼が言った。
「ええ本当に。外が暑かったら余計に美味しいわぁ。ふふふっ」
「お二人はご夫婦なんですか? こんなこと聞くと失礼かも知れないけど……」
「あっ! 年が違うと言いたいんでしょう? ふふっ」
「まぁ、どうみても旦那さん〔?〕の方が随分お若く見えるんですがねぇ」
「そうなんですよぉー。彼の方がずっーと年下なんですぅ」
「――ねっ!」
 花織さんはダーリン《くそっ! 俺は独りなのに……》の方へ可愛く笑いかけた。
「そうなんですよ。花織は僕よりかなり年上なんですけど、たまたま出逢った時に僕の方が一目惚れしちゃって……。すぐに交際を申し込んでねっ……へへっ」
「うふふ……」 二人が目を見交わす。

《はぁー! 何がへへっだよ。デレデレしちゃってさっ……ブツブツ》
 羨ましい俺は、心の中で憤懣やるかたない思いで悶々としていた。
《ただでさえ暑いのに……。はぁー、今日は朝からつくづくと熱い日らしい》
 突然腕をツンツンと突かれて、ん? と見ると沙耶ちゃんが小声で言った。
「マスター、何をブツブツ言ってるんですか?」
「えっ!? 俺、何か言ってた?」
「はい、ブツブツと……ふふふっ」
 しまったぁー! いつの間にやら声に出していたようだ。
 幸い二人は、しっかり二人の世界に浸っているようで、俺の声は聞こえてなかったみたいだった。はぁ〜〜良かった。

「あっそういえば花織さん、さっき一人では入れないとか何とか言ってたよねぇ?」
「あぁそうなんですぅ。私、お一人様ができない性格なんですぅ。だから何処かに行く時には、いっつもダーリンと一緒なの。ふふふ」
「全く花織は手が掛かるんだからなぁ」と、彼。
「じゃあ、普段はあんまり出掛けないんですか?」
「そうなの。今はHP作りに凝っていて、おうちでそれをやってるのぉ。――それに家には可愛いワンコが二匹いるので、その子たちの世話もあるしぃ」
 そう言うと彼女は再びダーリンの方へ向き、
「ねぇ〜ダーリン」
「そうだよなぁ〜」
 またまた二人は見つめ合っている。
《はいはい、好きにして下さい……。もう何も言いません》
 その後二人はコーヒーを飲み終わると、手を繋いで帰って行った。
 まだまだ暑い(熱い)夏は続きそうだった。