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茶房 クロッカス その3

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「あのう、ずっと気になってたんですが……、皆さんて、どういう繋がりのお仲間なんですか?」
 弁当の話が一息ついたところで、草愛さんが遠慮がちに聞いた。
「あぁ、俺たちの関係ですか?」
 俺はそこで一旦息を継ぎ、そして続けた。
「――実は俺は、ここから一時間半の所で喫茶店をやってるんですよ」
「へぇーー、喫茶店をやってるんですかぁ?」
「はい。で、沙耶ちゃんにはうちでアルバイトをやってもらっています。そして良くんは、沙耶ちゃんの幼馴染みで、重さんと小橋さんはうちの店の常連さんなんです。そして美人のおりゅうさんは、小橋さんが行き付けのスナックのママさんなんですよ。最後、夏季さんは、今食べてる弁当を売っている弁当屋さんで働いていて、弁当が縁で親しくなったんですよ」
「ふぅーーん、そんな繋がりなんですか」
「みんな店を縁にした出会いの人の繋がりです」
「人の繋がりって本当に面白いですよネッ! ある時は励まされ、またある時は癒されたり、そしてある時は助けたり助けられたり、そんなこんながいっぱい続いて、そんな中でお互いの関係に信頼が宿るんでしょうかね。俺にとっては、そういったみんながある意味、家族以上のような気がしています」
「そうなんですか……。悟郎さんは本当に良い仲間をお持ちですね。それってとっても幸せなことだと思いますよ」
 草愛さんはそう言うと、母親のような目で俺をじーっと見た。
 草愛さんに言われてみて、改めてみんなに包まれていることの幸せを感じた。
 クロッカスをやってて本当に良かった!

「キャ〜冷たくて気持ちいいー!」
 その声に思わず顔を上げて川の方を見ると、沙耶ちゃんと良くんが川の水で遊んでいる。
 俺も立ち上がってそばまで行ってみた。
 川は澄んでいて、水の中を何やら小魚がヒラヒラと泳いでいた。
《あぁ、さっきの釣り人たちはこれを釣ってたのかな?》
 そんなことを考えていたら、いつの間にか沙耶ちゃんと良くんが水のかけっこを始めたようで、そのとばっちりで俺の方へも水が飛んで来た。
「きゃ〜、良くんやったなあ、エィッ!」
 そう言って沙耶ちゃんが、水をすくっては良くん目掛けて投げかける。すると良くんはサッと交わし、男にしてはやけに華奢でスルリと長い指をした手で、斜め上から水をはたき飛ばすようにして沙耶ちゃんに向けてバシッとやった。
「キャッ!」
 よけそびれた沙耶ちゃんが、また水を被って悲鳴を上げている。
 それを幾度となく繰り返している。
《かなり水を被って、二人とも濡れてるけど大丈夫かぁ? 風邪引くなよ。それにしても若いっていいなぁ……。そう言えば、あれは高校二年の時だったなぁ〜》
 二人を見ていて、俺はまた思い出してしまった。