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茶房 クロッカス その3

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「重さん、いつもと違うじゃない!? その服装。ま、いつもは仕事の帰りだから無理ないか。いつもは作業着だもんな。今日の服装はなかなか決まってるよ」
 と、俺が言うと、
「えっ? いゃーぁ、そうかぃ? 何だか照れるなぁー」
 そう言って重さんは嬉しそうに頭を掻いた。

 今日の重さんの服装は、何やら大きく黒で英文字が書いてある、お洒落な感じの白い長袖Tシャツに、下は普通のベージュのスラックスと、足元は同じくベージュの運動靴を履いている。
 そして、俺と同じで、寒い場合のことも考えてなのか、手に紺色のジャンパーを持っていた。
《さぁ、あとは小橋さんとRのママさん。そして………。そうだ! 沙耶ちゃんのボーイフレンド(?)がまだ来てないなあ》

「沙耶ちゃん、沙耶ちゃんの友達の良くんは遅いね。大丈夫かな?」
「あ、そうですね。ちょっと電話してみます」
 そう言って沙耶ちゃんは携帯を取り出し、良くんにコールしていた。
「おーーい! おはよー!」
 遠くから声がすると思ったら、仲良く二人並んで小橋さんとRのママが向こうからやって来る。
「やぁ、小橋さん、遅いですよー」
「ああ、ごめんごめん。実はママを迎えに行ったんだけど、家が見つからなくて手間取っちゃってさっ。ねっ、ママ」
「そうなんですよ。小橋さんたら、私がちゃーんと説明したのに分からないんだから……まったくぅ」
 ママさんは少々お冠のようだ。
「あ、そう言えばママさん。店でもないのにママさんて呼ぶのも変だし、名前は何て言うんですか?」
「あ、それもそうね。私、龍子って言うのよ。龍子のりゅうは『たつ』っていう字なの。何だか怖そうでしょ? うふふふ」
「――でも、怖くないわよ。取って食べたりしないから」
「ふーん、龍子さんか。あっ、それで店の名前がRなんだね。……じゃあおりゅうさんて呼んじゃおうかな」
 俺がそう言うと、
「おりゅうさんか、宜しくなっ」と、素早く重さんが挨拶をした。
「私、夏季です。宜しくお願いしますね」
 と、夏季さんが言い、小橋さんが今度はみんなに挨拶をした。
「俺は小橋です。JRの車掌をしているので、電車に乗ったら俺に出会うかも知れないよ。宜しくー。クロッカスに来るのは、勤務がシフトで色々なんで、なかなか決まった時間には来れないから、皆さんと会うことは少ないかもしれないけどねっ。今日は皆さんに会えて良かった。楽しいハイキングになりそうだ」
「マスター、良くんたら寝坊したらしいんだけど、今、急いでこっちに向かってるって!」
 電話を終えた沙耶ちゃんが報告してきた。
「そうか、じゃあ仕方ないから、もう少し待とうか……」

《それにしても、さすがおりゅうさんは色っぽいなあ。夜ならともかく、昼間見ても女の色気がムンムンだ! 熟年と言うにはまだ早いかも知れないけど、うーん、やっぱり凄いわ。むふふ……》 
 俺は目が星になり、口から涎が出そうだった。
《あ、いかんいかん。やっぱり小橋さんに感化されてきてるぞ! そう思ってるのを小橋さんに知られたら、小橋さんは何て言うだろう。ただ笑うだけかもな……フフフ》