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茶房 クロッカス その3

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 毎日暑い日が続いていて本当は嫌なんだけど、このところ表の掃除をする度に気になっていた、花壇の手入れを思い切ってすることにした。
 午後のゆっくりのんびりタイムに、店は沙耶ちゃんに任せて、俺はいつもは額上部に巻いてるバンダナを、今日だけは帽子のように頭に巻いて、手には軍手をきっちりはめて、いざ出陣! ならぬいざ花壇へ! と向かった。
 梅雨に降った雨の養分をしっかり吸って、雑草が逞しく育っている。それらを一本一本丁寧に抜いていった。中腰での作業になるので、腰が痛くなる。それでももう少しの辛抱だ。そう思ってしばらく作業に集中した。
「あぁー、やっと終わった!」 
 そう思って前屈みになっていた背中をぐぅーっと後ろへ反らして伸びをした。
 その時だった。
「暑いのにご精が出ますねっ!」
「わぁっ!」
 突然背後から声を掛けられた俺は、驚いた拍子にそのままの姿勢で背中から後ろに倒れた。
「痛ってぇー!!」
「まあ! 大丈夫ですかぁ? ふふふ……」
 何とか体勢を立て直して、腰を擦りながら後ろを振り向くと、その可愛い声の主が目は心配そうに、そして口は可笑しさを一生懸命噛み殺しながらギュッと結んで立っていた。
「いやぁー、お恥ずかしい所をお見せしちゃったなあ。ははは」
 俺は照れくさい気持ちを必死で隠しながら〔全然隠れてなくてモロ見えだったが〕、そのチャーミングな女性を上から下まで瞬時に眺め、声を掛けた。
「良かったら中でコーヒーでも飲んで行きませんか?」と。
 その彼女は見たところ、歳の頃は三十代(?)、身長は俺が170センチだから、多分150センチ少々か……、細めで稀に見る可愛い人だった。
《この街にもこんな可愛い人がいたんだぁ》と思った。
「うふふ、ありがとう。でも私、一人ではどこへも入れない人なんですぅ。それに今ダーリンを待ってるところなんですぅ」
 その人はそう言うと、視線を駅の方へ向けた。
「あっ! いたいた。ダーリーーン! こっちよぉー!」
 駅の方からこちらを見ている男性に向かって、いきなり大きな声で呼びながら手を高く振った。
 その男性は彼女に気付くと、彼もまた大きく手を振りながらこちらに向かって駆けてきた。