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茶房 クロッカス その3

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「よう、悟郎ちゃんよぅ。どうした?」
「ぅわあっ!?」
 突然呼びかけられて俺はびっくりした。
「何だ、重さんじゃないか。いつの間に来たんだぃ?」
「うふふふ……」
 沙耶ちゃんが口元を手で押さえて笑った。
「うん……??」
「マスター、もうさっきから重さん来てますよ。マスターったら、また何か考え事してたでしょう? 私、何度も呼んだのにぃ」
「えっ?! そうなのかー? ありゃ……、重さん悪かったなー」
「おう、いいってことよ。毎度のことだぁな。あははは……」
 重さんは楽しそうに笑った。

 今日の常連さん四番手が重さんだったのだ。
 俺が過去の思いに捉われている間にやって来ていたらしいのだが……。

「悟郎ちゃん、早いもんだよなぁ。一年経つっていうのは……」
 いきなり重さんがそう言った。
 俺は単なる世間話の始まりだろうと思って、
「あぁ、そうだよなぁ」と応えた。
「悟郎ちゃん、覚えてるかい? 一年前のこと」
「えっ? 何のことだい?」
「いや、分からないならいいんだよー」
「????」
「いや、それより最近は、昼間はまだまだ残暑で暑いけど、夜になると涼しくなって来たよなー。暑い時は一時〔いっとき〕だなあー。秋なんてすぐに通り過ぎて、また冬が来らぁーな」
「うん、そうだなあ。また冬が来るのか……。一年て本当に早いよなあ」
 その後、取り立てて言うほどのこともない世間話をして、重さんは帰って行った。