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茶房 クロッカス その3

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 俺と沙耶ちゃんは途中で口を挟むこともできずに、最後までじっーと聞いていた。
 夏季さんの心が、切なさに泣いてる声が、かすかに聞こえてくるような気がした。
 夏季さんはふいに顔を上げ、正面の時計を見上げると、
「あっ! いけない、もうこんな時間なのね。仕事に行かなくちゃ。私、パートの時間だからこれで……おいくらですか?」
 俺が料金を言うと、夏季さんはそれを支払い急いで店を出て行った。

「マスター、夫婦って、愛するって難しいんですねっ」
 沙耶ちゃんが珍しくしみじみした表情で言った。
「うん、そうみたいだねー」
 俺も頷きながら同意した。
「でもねぇ、マスター」
「ん?」
「夏季さん、マスターのこと好きですよっ」
「ブッファーーー!!」
 俺は飲みかけのコーヒーを一気に噴き出してしまった。
「キャー! マスター、私にかけないでぇ!! 」
「あぁ、ごめんごめん」
「でも、元はといえば沙耶ちゃんが、急に変なことを言い出すからだろう」
「あらっ、違いますよ、変なことじゃないですよ。絶対、夏季さんはマスターに気がありますって」
「そうかぁー? こんな俺にぃ? そりゃあないだろぅー。まさかなぁー」
 エヘヘヘッ……。