死者からのメール
「……」
綾香は階段を登って行く。木原はそのあとを追うしかない。そして、昨夜の夢の続きだと思った。まだ、夢は続いている。そう、思いたかった。木原も泣いていた。
大量の涙をまぶたから溢れさせている男女を、中年女性のウェイトレスは眼を丸くして窓際の席に案内した。ふたりは、沈黙した。だが、すぐに嗚咽を始めた。暫く経ってから、木原は尋ねた。
「事故ですか?」
「ええ」
「どんな?」
「車を運転していて、対向車と正面衝突です」
「相手は?」
先程の中年の従業員がオーダーを取りに来た。ふたりとも、アイスコーヒーを注文した。そのあとで綾花は返答をした。
「怪我して病院へ運ばれました」
木原は苛立ちながら更に訊いた。
「どんな車でした?」