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死者からのメール

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 バスに乗っても心配なことがあった。バスが事故に巻き込まれ、炎上したというニュースを耳にしたことがある。絶対に安全だという保証はないのだ。運転手が飲酒運転をすることも、絶対にないとは云えない。大型トレーラーの運転手が飲酒運転をすることもある。そういう車に追突されないとも限らない。
 バスの中で眠るために、木原は荷物から出したウィスキーを飲んだ。飲酒運転による事故を怖れる男が、バスの中で酒を飲む。それは、矛盾ではない。午前零時を過ぎた。理絵花はもう眠っただろうか。木原は日中の仕事が忙しかったこともあり、疲れていた。酒が眠りの淵に誘い込もうとしている。可愛らしい理絵花の笑顔が見えている。木原は彼女を追って走る。理絵花は逃げる。ときどき振り向く彼女は笑っている。何度目かに振り向いたとき、彼女は泣いていた。なぜ、泣いているのか。その理由を、木原は確かめたいと思った。


                *


作品名:死者からのメール 作家名:マナーモード