星が語る恋愛は狂う
第三の星は扉の向こうに
白い大きな夢の城 願いが叶う夢の城
一人きりの女主人 望みを捧げる訪問者
「貴方の願いは私を生かす」
微笑む口は血色に 人喰い信者は恐怖を知らない
冷えた屍肉も大切に 愛する私の信者たち
いつしか流れる時の中 女の笑みは妖艶
いつしか流れる大量の血 女の笑みは途切れない
嗚呼 その美しさはどう喩えれば?
嗚呼 その足音も優美な音楽
そんな夏のある日の事 城を男が訪れた
そんな異国の旅人に 彼女は恋をしてしまう
「貴方の名前はなんていうの?」
いつしか流れた濃密な時間 男の甘く優しい言葉
いつしか流れた熱い時間 男と女の許されぬ恋愛
嗚呼 女の食欲は尋常では無く
嗚呼 男の愛欲は尋常では無く
繰り返される女の食事 ものともせずに見つめる男
その目に灯るは 女と同じ獣の光
求め合い 過ぎ去る長い時
求め合い 過ぎ去る愛の息
「もう帰りたい」
さあ 運命の瞬間はすぐそこに
さあ 最期の瞬間はすぐそこに
「ならば此処で終わりにしましょう!」
人喰いと言われた女の腕は 一直線に彼の首へ
旅人と名乗った男の腕は 一直線に女の胸に
光るナイフ 崩れ落ちるのは死の女神
笑う男の手元には 薔薇色の花弁
儚い愛を理解せず 消えた女の長い命
本物だったと 呟く者は城にいない
願いが叶う夢の城 新しき主人はまだいない
寂れていった夢の城 去った男の跡は無い
「いらっしゃい」
もしもそう言う女がいたら そっと体を委ねなさい?
そうすればきっと……
願いは叶うはずだから
END