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皮肉な出会い

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「お急ぎでしたか?」
「そうでもありません」
「まるで誘拐事件ですね」
「そうですよ。ひどいです」
「申し訳ないと、思っています。だから、タクシーで戻ります」
 それ以上に迷惑はかけられないと思った。
「お金はあるんですか?車の中じゃないですよね」
「大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。出て入り直すと、高速代が高くなると思いますから、その分はお支払いします」
「あと、一キロで出口です……いいです。ETCですから。それに、あなたはタクシー代がかかるし、大損害じゃないですか」
「いいひとですね。ところで、どなたかをあのサービスエリアに残して来た、ということはありませんね?」
「ひとりで出て来ましたから、大丈夫です……あなたも、いいひとですね」
「ありがとうございます」
 間もなく出口なので牧野は緊張した。周囲の風景は一変し、多くの山に囲まれている。紅葉が見ごろだと、彼は思った。
作品名:皮肉な出会い 作家名:マナーモード