皮肉な出会い
「地図帳。後ろにありますか?」
「ありません。車を間違えたのはあなたですからね!」
「……私が間違えたんですね。そういうことですか。ごめんなさい。次のインターで出て、戻りますよ」
今のところ渋滞はしていない。だが、時間のロスは一時間前後にはなるかも知れない。
「ひどいわ。うしろで寝ようなんて、思ったのが間違いでした」
「済みません。急いで戻りますから……」
牧野は同色、同型の自分の車と間違えたのだった。
「事故に気をつけてください……あなたの車。ドアロックしてなかったんですね」
うしろの女性は、一瞬見ただけだったが、牧野の好みのタイプだったような気がする。
「エンジンも回っています。今もね」
「不用心ですね。盗まれますよ」
性格も悪くないのだと、牧野は思った。
「ありがとうございます。ご心配頂いて……」
残念な出会いかただと、牧野は思っている。
「あと二キロで出口です。間違いなく出ないと……」
「はい。そうですね。間違いなく出ます」
「……」