進化するパスワード
第四段階は日常からの解放。
そう、それは … 「ロマン」。
人はロマンを求めて、旅に出たい。
そして一度は訪れてみたい地があり、パスワードにその憧れの地名が組み込まれる。
「new york」、「paris」、「istanbul」、それとか「everest」
毎日繰り返し、パスワード「everest」と打ち込む。
その内に、きっとエベレストの頂上に、威風堂々と立てるような期待が膨らんで来る。
しかし、まことに残念な事だ。
五百回位打ち込んだ頃から、溜息が出て来る。
ロマンも良いが … 現実は暇も金もない。
そう、決して実現しないと気付くのだ。
「あーあ」
夢は打ち砕かれて、次の第五段階へと進化する。
第五段階は … 「ひきこもり」。
要は、この辺りから自分だけの閉ざされた世界、
つまり趣味/趣向のパスワードを好むようになる。
映画の好きな人は俳優の名前。
スポーツ好きは己の御贔屓チーム名。
そしてゴルフ趣味なら、もちろん「hole in one(ホールインワン)」。
また、ガーデニングに凝っている人なら、幻の花「blue rose(青薔薇)」とかだ。
しかし、これもどこまで打ち込んでも趣味の世界、単なる自己満足でしかない。
だから飽きてしまう。
この辺りから、
もっと素晴らしいパスワードはないか、その探求の旅が始まるのだ。