小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

君が袖振る

INDEX|34ページ/42ページ|

次のページ前のページ
 

 龍介はそれを聞いてドキッとした。そして黙り込み、暫く考えた。

 龍介には婚約者の那美子がいる。
 後三ヶ月もすれば結婚し、那美子と共に人生を歩んで行くことになる。

 しかし、なにか不思議な力に導かれて瑤子に熱いキスをしてしまった。
 またそこにたとえ綾乃が隠れていたとしても、これは那美子への背信行為だ。龍介に自責の念が湧いてくる。那美子に申し訳ない気持ちで一杯だ。

 そして今、強く思うのだ。
 高校時代からの綾乃への恋心、それにきっちりと終止符を打っておかなければならないと。

 しかし、たとえ瑤子とはこんな成り行きで、キスをしてしまったとしても、「誰へのキスなの?」の答は、今瑤子に告げられない。

 それを言ってしまえば、瑤子に対して最大の侮辱となってしまう。
 龍介はじっと沈黙を続ける。

 そんなじれったい龍介に痺れを切らせたのか、瑤子が言う。

「もういいのよ、龍介君。私途中で、龍介君は今誰へのキスをしているのだろうってね、わからなくなったものだから・・・・・・それは私ではなくって、そう、綾乃でもないわね。他の誰かさんなんでしょう」

 龍介はこれに対し、「うん、まあなあ」と煮え切らない。そんな龍介に瑤子はぽつりと呟く。

「みんなを気遣ってるのね。だけど、情と愛とは違うのよ」
 瑤子はそんな言葉を残して、さっさと会場の方へと走り去って行ったのだった。

 龍介は立ち去って行く瑤子の後ろ姿を目で追いながら、何が起こってしまったのかが理解できない。

 それでも、こんな出来事のあった同窓会、充分な盛り上がりの中でお開きとなった。
 そして、龍介はいつもの独身生活へと戻って行ったのだった。


作品名:君が袖振る 作家名:鮎風 遊