君が袖振る
しかし龍太は、それを綾子からのメッセージ、つまり、さらに「ご自由に」と解釈したのだろう。
龍太が綾子の親友の葉子と仲良くし始めた。
もし綾子を分類すれば、美人の範疇に入るだろう。そして葉子は、キュートな女の子に分類される。
龍太はまだ高校生。しかし男の子。
綾子は、「龍太君は、いろんな女の子とお付き合いしたいのかなあ」とも思ったが、「なんでわざわざ、親友の葉子に」と腹が立ってくる。
そして綾子がそっと龍太の様子を伺ってみると、龍太が葉子のそばで嬉しそうに微笑んでいる。もう頭にきた。
綾子はこうなればと思い、さらに過激に卓史にベタ付いて行くのだった。
そして、そのような不穏な状態のままで、修学旅行は終わってしまった。
一生の内に、たった一回しかない高校の修学旅行。残念ながら、綾子にとって、それは心底楽しいものではなかった。
しかしそれも終わり、またクラスでの授業に埋没する日々となった。
そんな日に、綾子は一通の手紙を受け取った。それは意外にも、龍太からのラブレター。
いや、もしそれを大人っぽい言い回しで表現すれば、恋文と言った方が当たっていたのかも知れない。