君が袖振る
それに対し綾子は、最近身に芽生えてきた女っぽさを放出させながら応戦する。
「龍太君が、もっとその袖を一杯振ってくれたら、もっともっと面白くなるかもよ」
綾子はそう言って、龍太に背を向けたままじっと立ち続けている。
それは、何かを期待しながら。
そして、そっと長い黒髪を。悪戯っぽく・・・・・・その細い指で僅かにかき上げた。
多分、その髪の隙間から、後れ毛のある白いうなじが、龍太の目に入っているだろう。
綾子はまだまだ未成熟。しかし、若い女の色気を、本能のままに振りまいて。
龍太は、そんな綾子の妖しい立ち姿を見せ付けられて、どぎまぎとする。もう高ぶる気持ちが抑えられない。
そんな空気が綾子には伝わってきた。
そして綾子は、背後に龍太が突然駆け寄ってくるのを感じた。その瞬間に、龍太が綾子の後ろから、ぎゅっと抱き付いてきたのだ。