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映画レビュー

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ジョージ・シートン『三十四丁目の奇蹟』


 人間の日々の行動は、たとえ人間に自由意思があろうと、ほぼ決定論的に動いている。なぜなら、人間は刺激に対する反応のパターンをある程度安定化させることで環境に適応しているからだ。だから、人間の行動は必然性に支配され、新たな行動様式を手に入れる、つまり可能性に対して開かれていくためには何らかのきっかけが必要である。この映画に登場するクリスは、自らがサンタクロースであると信じている。彼は想像や夢を大事にし、現実重視のドリス、スーザンとは真っ向から反する。クリスはドリス、スーザンにとって他者であった。了解不可能で、異常な他者であった。だが、彼女たちはそういう他者と出会うことによって少しずつ変化していく。ドリスやスーザンは想像を重視するようになっていく。このように、人間の可能性というものは、他者との出会いによって開かれ、人間はその必然性のくびきから逃れることができるのである。
 面白いのは、クリスのような異常者が、社会の中でそれなりの役割を与えられていく過程である。クリスのような人間は、本来社会から隔離されるはずである。実際、病棟に送りこまれたりもする。だが、クリスはデパートのサンタクロース役として、商業的に重要な位置を占めていくし、世の中の子供たちにとってサンタとしての象徴的な地位を占めていく。そして、司法システムにおいても、彼は公権的にサンタであることが宣言されるのである。このように、異常であるものが社会システムに組み込まれていくことで、社会システム自体もその異常者に適合していこうとし、社会は異常者を利用したりラベリングしたりして、変化していく。異常者は、社会にとっても他者であり、社会もまた異常者との出会いでその可能性を開かれていくのである。

作品名:映画レビュー 作家名:Beamte