音楽レビュー
UNISON SQUARE GARDEN『UNISON SQUARE GARDEN』
UNISON SQUARE GARDENは、その軽快なリズムと諧謔的な旋律で聴く者の遊戯的な次元を活性化する。アルバム『UNISON SQUARE GARDEN』では、全11曲のうち前半の8曲はそのようなタイプの曲だ。
彼らの諧謔は、価値のあるものを無価値にすることによって生じる。「英雄気取って放物線描いたけど、雨」(「センチメンタルピリオド」より)このように、初めは英雄的だった行為が、外在的な事情によってついえてしまう、その挫折のおかしみが、彼らの曲には頻出する。それは歌詞の次元と旋律の次元の両方で生じる。旋律の次元でも、聴き手の予期を裏切り聴き手を挫折させることでおかしみを生み出している。
つまり、彼らの人や対象の愛し方は独特なのだ。価値があるから愛するわけでも、価値がないから愛するわけでもない。価値があるものがその価値の実現において挫折する、無価値化する、そのおかしみにおいて、彼らは対象を愛する。価値と無価値の往復運動・循環運動において、その狭間にあるおかしみが、彼らが人や対象を愛するときの愛し方なのだ。彼らはその意味で遊戯的にものを愛している。価値や無価値という静的な状態を愛するのではなく、価値と無価値とのはざまの動的な変換、その遊戯において、かれらはものを愛するのだ。