音楽レビュー
IRON SAVIOR『UNIFICATION』
IRON SAVIORはメタルを華麗に転用させて見せたバンドである。彼らの上空にあるのは魔や神秘ではなく宇宙であり戦争であるのだ。神秘的なものの悪意と一体化するのではなく、その攻撃性を勇壮な闘志と化している。メタルのヘヴィーで屈折した切迫したメロディーは、何も悪を指し示すためにのみ存在するのではない。彼らはメタルの音楽性を宇宙戦争へ向かう決然とした意志に置き換えている。メタルがこのように転用可能だという圧倒的な実例を示したことに彼らの大きな功績はあるだろう。
だが、宇宙もまた神秘であるし、宇宙での闘いもまた魔的なものである。その意味でIRON SAVIORはメタルの正統な嫡出子なのかもしれない。だが彼らの音楽はひたすら軍歌のようにかっこいい。湿度が感じられないのである。メタルがどうしてもまといがちな邪悪な湿度を抜いているところに恐らく彼らの長所があって、神秘や魔的なものに向かいながらも、あくまでそこに従属的に巻き込まれず自らの意志で戦い抜こうとする決意が感じられる。メタルの可能性はもっと他にもいろいろあるだろう。その可能性の一端として興味深く聴いた。