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音楽レビュー

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ULTRAVOX『INGENUITY』


 ULTRAVOXは光の音楽を作り上げている。世界が砂のように流れ落ちてくるとき、それを掌に受け止め、掌の上に残ったものを歌っている。大きなもの、抽象的なものへと、些細なものが閃いていくのが彼らの音楽の動きであり、そこには造形や創作といった瞬発的な力が常に働いているのである。「INGENUITY」「BEAUTIFUL WORLD」「DISTANCE」「IDEALS」といったタイトルからして、抽象的で光の方角を向かった音楽を志向していることがよく分かる。曲もまた、幻想的な音階を長く伸ばす手法が良くとられていて、世界を分析するよりは連続化させていく、小さく分け入っていくよりも大きく総合していく、そのような感触が得られる。
 だがそれにもかかわらず、彼らの音楽はそんなに秩序立っているわけでもない。いわば、秩序が生まれる手前の創発、その微細な動き、その造型の過程に焦点が合わせれているように思う。完全な秩序を志向したら音楽なんて登場しないだろう。音楽は絶えざる動きであり、音楽が幸福に停止したところに真の秩序が宿るはずである。だから彼らの音楽は、秩序や完全性が造型されていく創発の過程を歌い上げていると見ることができる。それはカオスから秩序へと至る鋭敏な機知の働きであり、その閃いていくものをどこまでもまとめ上げていく緩やかな活動なのである。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte