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音楽レビュー

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ROLO TOMASSI『ASTRAEA』


 ROLO TOMASSIの世界では全てが崩壊している。世界は滅びていて不安定だし、自己は罪深いし満たされないし苛立っているし、自己と世界との関わり合いもうまくいっていない。彼らは恐らく完全性や安定性や普遍性に向かうロマンを持っている。良心の強い人間が自らの罪に強い痛みを感じるように、理想を求める彼らは、それゆえにこそ自己と世界の不完全性に対して敏感で強い痛みを感じるのである。不気味な旋律や嵐のあとの静けさのような旋律、ヴォーカルのスクリームなど、全ては自己と世界の不完全性について痛みを感じその痛みを表出しているのである。
 だが彼らは決して自らの痛みを解ってもらおうなどと思っていない。そもそも、他者との関係性が崩壊しているのだから理解などありえないし社会的な救済もあり得ない。彼らの曲の旋律の異様さは、何よりも聴く者、ひいては社会を拒絶するものであるし、スクリームもまた拒絶以外の何ものでもない。全てが痛々しい、だがこの痛みは決して解りえないし救済しえない。そこで彼らはその拒絶によって自らの痛みをある意味神秘化しているように思われる。彼らの痛みは本質的に共感できないものではない。彼らの態度が共感を拒んでいるに過ぎない。そして、彼らは曲に付された態度で他者の共感を拒み続けることで、自らの痛みを神聖なものにしているのだと思われる。滅び尽きた自己、壊れてしまった自己、だがそんな自己の廃墟にかけがえのない価値を見出し、それを誰にも手渡そうとしない。そこに彼らの自己救済があるのだ。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte