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音楽レビュー

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tacica『HOMELAND 11 blues』


 tacicaは一貫して「生命」を根源的なモチーフとしている。だが、この生命は儚く散りゆくものでもぐらぐら感情で揺れ動くものでもない。彼らにとって生命とは何よりも持続するもの、傷ついては修復して、環境との応答を保つものである。だから、彼らの楽曲は、瞬間的な感情を歌うものでもないし、破壊的な悪意や実存の危機などを歌うものでもない。彼らは愛や意志を歌っているのだが、それらは論理的な愛でありまた論理的な意志なのだ。つまり、移ろいゆく愛ではなく普遍的で持続する愛であり、思いつきで過ぎ去ってゆく意志ではなく体系だっていてどこまでも説明可能な意志なのである。曲調にもそういった傾向は如実に表れていて、派手さや重さを嫌い、極端に振れることで壊れていってしまうことに対して慎重な姿勢を見せている。
 だから、tacicaの楽曲を聴いていると、今の比較的若い世代の人たちの堅実な生き方が反映されているようで心強い。苦労を知りながらも決して諦めずに着実に実力をつけていく。激することや落ち込むことにいつまでもとどまらず、持続的な進歩を目指そうとする。人との関係を簡単に壊さず、それらを保ち続ける器用さがある。勿論今のすべての若者がそうであるわけではないが、厳しい社会状況の中を生き抜く若者の姿が、tacicaの論理的生命のモチーフに重ね合わさってきて興味深い。
 この点、同じように生命をモチーフとしているACIDMANと比較すると面白いかもしれない。ACIDMANの生命は絶え間なく情熱的に上昇していくことの証明としての生命である。それに対してtacicaの扱う生命は、より生物学的でより穏当であり、上昇というよりも損傷からの回復、情熱というよりも感情の安定、証明というよりも論理の持続を重要視している。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte