音楽レビュー
RAMONES『RAMONES』
RAMONESは、当時のロック界の潮流としての高技術化に反発して、単純で短い曲作りをしたという。確かに彼らの曲のコード進行は単純だし、ギターのメロディーラインも単純で、誰でもすぐコピーして演奏できそうである。だが、かれらは、そういう単純な反権威、反時代という動機だけで新しいジャンルを生み出したわけではないだろう。反権威、反時代というからには、彼らの属性としてすでにそちらへ向かう傾向が内蔵されていたといわねばならない。
私が思うに、それは、音楽の伝わり易さの追求、音楽を共有したいという願望だと思う。高度な技術を要する音楽は確かにその華やかさで聴く者を魅了するかもしれないが、反面アーティックで理解が困難なものにもなる。高度なものは伝わりにくいのである。複雑さによって音楽の通用性が害されること、たぶん彼らはそれを快く思わなかったのだ。彼らはとにかく伝わりやすい音楽を作ろうとした。
そして、歌詞からもわかるように、「I wanna」「I don't wanna」「let's」など、聴き手の心情に揺さぶりかけるような、情動のまっすぐな表出がある。こういう情動を何よりも聴く者に伝え、そして聴く者と共有したかったのがかれらなのだと思う。欲望、拒絶、勧誘という、聴き手を動かしやすい言葉を、聴き手に伝わりやすい音楽に載せる。非常に融通が利き、音楽を透明な媒体と化しているのが分かる。おそらく彼らは著作権とかそういうものには余りこだわりたがらないだろう。それよりもパブリックドメイン、フェアユースに寛大な傾向性が見て取れる。