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音楽レビュー

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Perfume『Perfume~Complete Best~』


 Perfumeの楽曲を聴いていると、非常に単純なものが繰り返されていくことにより、大きな堆積を感じることができる。だが、この単純なものの繰り返しとは、曲のテーマを執拗に設定し、そのテーマが音楽を意味するのに必要な作業ではないだろうか。音楽は鳥の歌や川のせせらぎを意味する記号として用いられることもあった。つまり、R.シュトラウスの楽曲に明らかなように、音楽はシニフィアンとして機能することがままあった。だが、彼女らの音楽を聴いていると、どうやら音楽は意味されるもの、シニフィエとして働いているのではないだろうか。
 「パーフェクトスター」「リニアモーターガール」「コンピューターシティ」などなど、彼女らの曲ではキーとなる言葉が繰り返し歌われ、その他の歌詞は、そのキーとなる言葉を文脈づけていくに過ぎないのである。それに対して、音楽の方は、ミニマリズムやエレクトロニカなどの文脈によって規定されていて、音楽と歌詞はそれぞれ全く異なった文脈に根差しているのであり、本来全く無関係である。このように、本来全く無関係である歌詞と音楽を、「歌詞が音楽を意味する」という記号関係で偶然的に結び付けるということ。彼女らの曲を聴いていると、そのような記号関係がよく見えてくる。
 例えば、「犬」という言葉は、それをめぐるイメージや理論によって豊饒化されている。言葉はそれ単独では全く痩せたものであるが、意味を持つことによって途端に豊饒化するのである。同じように、彼女らの曲では、キーとなる「リニアモーターガール」などの言葉に対して、音楽が意味として付与されることにより、その言葉がとたんに活力とリズムに溢れた魅惑的なものになるのだ。そして、そのような音楽による豊饒化を明確に実現するにあたって、歌詞は単純で中心を持たなければならなかったのである。音楽が意味として集中していく行き先としてのキーとなる言葉の繰り返しによって、その言葉の豊饒化が効果的に実現される。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte