音楽レビュー
RADIOHEAD『OK COMPUTER』
RADIOHEADの曲に感じるのは、他の同類のものたちと比べて、何か一つ次元を増やしていこうとする態度である。例えば歌詞カードを見ると、単語がばらされていたり、二次元平面に視覚的に散らばっていたりして、通常の一次元の文章に新たに視覚的な次元が追加されていることが分かる。だが、彼らの一番の功績は、音楽に沈黙の次元を追加したことであろう。「no alarms and no surprises/silent.」という歌詞に端的に表れているように、彼らは沈黙を重視しているのである。それは、物憂い旋律からもわかるし、いちいち長く引き伸ばされる音からもわかる。
音楽が存在するということ。それは端的に音楽が沈黙していることと同義である。彼らの楽曲には激しいものもあるし、歌詞にも「kill」がよく出てくる。「where the hell im going?? at 1000 feet per second」なんてのもある。だが、それらは全て対自的に閉ざされている。歌詞には良く「ill」という未来形が出てくるが、ここには彼らの音楽が対自的であることがよく示されていると思う。つまり、音楽がそれ自体として即自的にあるという次元に一つ次元を足すことで、音楽への反省、自己への反省という対自的な次元が現れる。そして、その対自性が音楽を閉ざし、沈黙を生み出すのである。
暴力的で苦しい生・音楽、それを対自的に閉ざすことで、沈黙により絶対的に覆うこと。そこに生と音楽の新たな次元が生まれ、我々はそこに彼らの音楽の敵意を見出すのである。